「なぜ医学部に行かせたいのか?」…経済アナリスト・森永康平氏が〈わが子を医学部受験させたい親〉に“あえて”問うワケ
「医学部へ行くなら、医師になれ」は「英語を習わせるから、翻訳家になれ」と言うようなもの
どんな状況になったとしても、持っている選択肢が多ければ、何らかの対応策を取れるようになります。医学部進学は、強いて言えば「他学部よりもお金がかかる」というデメリットはあるものの、「わが子の選択肢をいかに広げるか」という観点では、価値の大きい教育投資と言えるでしょう。 筆者の子どもたちはまだ幼いので、医学部を含めて受験うんぬんという話が出る段階ではありません。しかし英会話教室などには通わせています。これは「〈わが子の選択肢を増やすため〉に医学部受験を検討する」という発想と似ています。 現在子どもたちは日本の小学校や幼稚園に通っているので、今のところ、英語を話せるようになる必要はまったくありません。今話せたところで、人生を左右するようなメリットは特にないでしょう。それでも英会話を習わせる理由は、筆者自身が日本経済に対してあまりいい予想を持っていないので、仮に国外に出ないと生きていけない局面になっても対応できるようにするためです。少なくとも言語が障壁となる事態は避けたいと思っているので、親としては、お金を投じて語学スキルを身につけさせてあげたいと考えています。 英会話教室に通わせないほうが当然、出費は抑えられます。それでもお金をかけるのは、将来的に国外で稼がなくてはいけない事態に直面したり、逆に、国内でも問題なく暮らせるけれど国外へ行きたいと考えるようになったりしたときに、わが子が「言葉を話せないから」という残念な理由で諦めざるを得なかったら、あまりにも可哀想だと思うからです。 取り除ける障壁は取り除いてあげたい、何かあったときにも英語が話せたほうが選択肢は広がるよね、というだけの話です。そこには「医学部へ行くなら、医師になれ」のような、「せっかくお金を出して英語を習わせるのだから、翻訳家になれ」といった考えはありません。 親が医学部を勧める場合も、本当はこの程度がよいのではないかと思います。そうすれば、仮に受験に失敗したときに子どもが必要以上に傷つくことは避けられるでしょうし、親からプレッシャーをかけられたことで気持ちが医学部受験から遠のいてしまうという事態も防げると思います。