パリオリンピック2024に向けて、セーヌ川再生の物語 川で泳ぐ競技は開催できる?
「清流ではないが、水中にすむ生物にとっては健全な状態だ」
15億ドルもの資金を投じて浄化作戦が進められているセーヌ川は、今年の夏に開催されるオリンピック・パラリンピックで主要な役割を果たすことになっている。パリの街を流れるこの川は開会式の舞台であり、すべてが計画通りに進めば、3つの水泳競技の会場になる予定だ。 ギャラリー:パリのゴミ捨て場から「泳げる川」へ、セーヌ川の再生 写真6点 かつてセーヌ川では、日光浴や川遊びに興じたり、川の水を使ったデリニー・プールでビキニ姿を披露したりと、パリ市民の遊び場だった。だが、そうした娯楽は水上交通や水質汚染を理由に100年以上前に禁止されていた。それが変わろうとしている。 セーヌ川の安全性をアピールしようと、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏は、五輪開幕前に川で泳ぐつもりだという。2024年6月末に予定していたが、フランス総選挙に配慮して「日程を変更する」と市長は記者会見で述べた。また、最近の水質検査で、川の水には安全ではないレベルのバクテリアが確認され、遊泳は市長の健康を害するおそれがあるという。しかし、大会組織委員会は、オリンピックはこの歴史ある川の新時代の幕を開く、という期待を捨てていない。 「私たちの目標は、オリンピック・レガシー(開催地に長期的に残る良い影響)をもたらすことです」と、オリンピック・パラリンピックおよびセーヌ川担当のパリ副市長であるピエール・ラバダン氏は言う。「つまり、あなたや私、あるいはパリを訪れる誰もが、セーヌ川で泳げるようになることです」 何世紀もの間、セーヌ川はごみ捨て場だった。洗濯で汚れた水や人の排泄物が流され、中世の頃の肉屋は処理した肉の残りを投げ捨てていた。 19世紀、工場や家庭から出る汚水はセーヌ川に直接流されることが多かった。19世紀後半に、セーヌ県知事で男爵のジョルジュ・オスマンによる都市大改造計画のもと、画期的な下水道網が新たに整備された。パリにとって工学的には大成功だったが、セーヌ川にとって衛生上は有害であった。 現在、新たな技術を駆使して川の再生が図られている。パリは2025年夏までに、川沿いに公共の遊泳スポットを3カ所オープンさせる予定で、汚れた川を美しく変貌させようとしている。