スペースワンのロケット「カイロス」連続失敗も、2024年はロケット開発飛躍の年に
飛躍の1年
カイロス2号機の打ち上げは失敗したものの、2024年に国内で衛星打ち上げに成功したロケットは5機となり、前年の2機を上回った。1月には小型月着陸実証機「SLIM」の月面着陸成功。2月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発した大型の新型基幹ロケット「H3」2号機が成功し抜群のスタートダッシュを切り、24年は飛躍の1年だったといえるだろう。 H3の連続成功を受け、将来的に単独での運用を担う三菱重工への受注も加速した。9月にはフランスの大手衛星通信会社ユーテルサットとロケットの打ち上げで合意。10月にはアラブ首長国連邦(UAE)宇宙庁と小惑星探査機の打ち上げで合意した。商業打ち上げは米実業家イーロン・マスク氏が率いる米スペースXの1強状態が続いているが、ナンバー2争いに名乗りを上げそうだ。 一方で、年末にかけて小型ロケットでは不運が連続した。11月にはJAXAの開発する次世代小型ロケット「イプシロンS」が、種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)での燃焼試験中に爆発。この事故を受け、当初予定の24年度の打ち上げは不可能になった。これに今回の「カイロス」2号機の失敗も重なった。 政府は30年代前半に官民で年30回のロケット打ち上げを目指しているが、いまだ遠く及ばない。現状、日本で安定した打ち上げが可能なロケットは、いずれも大型ロケットの「H2A」と、「H3」のみだ。その「H2A」も25年度の50号機で打ち止めになる。「H3」も現状、生産能力と種子島という限られた射場の制約により年6回の打ち上げが限界とされる。 ●スペースXも主力ロケットが3回目まで失敗 この「30」という数字をクリアするためには、短い準備期間かつ高頻度で打ち上げることができるカイロスやイプシロンといった小型ロケットが必要不可欠だが、両者の失敗による影響は避けられない。 ただ、森合教授は「今年はH3が2度目の挑戦で成功につなげたことで、失敗を許容する世論が醸成された1年となったのではないか。国の補助金も増えており、民間主導でのロケット打ち上げを挑戦しやすい土壌ができている」と話す。 1強として世界をけん引するスペースXも、現在の主力ロケットである「ファルコン9」の前身機、「ファルコン1」は3回目までの打ち上げはいずれも失敗した。4度目の挑戦で成功し、10年のファルコン9実用化へつなぎ現在の地位を確立している。 森合教授は「カイロス」3号機について「お客様の衛星を失っては信頼関係にも影響する。成功を確認してから衛星を載せるべきではないか」とくぎを刺す。H3も初号機失敗で地球観測衛星「だいち3号」(開発費約280億円)の消失を受けて、「H3」2号機ではダミーの大型衛星を搭載していたからだ。 ライバルがひしめく中、宇宙ビジネスを勝ち抜くのは容易ではない。これまで培った失敗を糧に、25年が日本の宇宙開発におけるさらなる飛躍の年となることを願うばかりだ。
齋藤 徹