スペースワンのロケット「カイロス」連続失敗も、2024年はロケット開発飛躍の年に
「一刻も早く今回の結果の原因を究明し、再発防止策を明らかにする。失速することなく、小型ロケットによる衛星打ち上げサービスに向けてまい進していく」。宇宙スタートアップ、スペースワン(東京・港)の豊田正和社長は、18日午後の記者会見で力強い言葉を口にし続けた。 【関連画像】2024年に国内で打ち上げられた主なロケットの一覧 スペースワンが開発した小型ロケット「カイロス」2号機の打ち上げが同日、失敗した。3月の初号機打ち上げ失敗時には、ロケットが自ら推進力不足と判断し打ち上げから5.3秒後に爆破。今回は推進力の許容範囲を広げて挑んだことで前回の課題はクリアしたものの、次の壁が立ちはだかった。 専用のロケット発射場、スペースポート紀伊(和歌山県串本町)から18日午前11時に打ち上げられた「カイロス」2号機は、打ち上げ直後は真っすぐ上昇したが、一定時間経過後、らせん状の軌道を描きながら上昇するようになった。打ち上げから3分7秒後には飛行中断措置がとられ、高度110.7キロで爆発。搭載していた台湾の公的宇宙機関である台湾国家宇宙センター(TASA)の衛星など衛星5機は紀伊半島沖に沈んだ。 スペースワンによると、打ち上げから80秒後にロケット1段目のノズルの駆動制御に異常が発生。それによりロケットの姿勢が崩れ、想定の飛行範囲から少しずつ西側にずれていった。ずれが大きくなり、地上の安全を確保できる許容範囲を逸脱したことで、飛行中断が行われた。 日本初となる民間企業単独での衛星の軌道投入という歴史的快挙は再度持ち越しとなったものの、豊田社長は「失敗とは考えていない。経験は貴重で次の挑戦に向けての糧で、初号機から9カ月でここまで前進できた」と意義を強調した。スペースワンは3号機について、製造済みの部品があることも明らかにし、早期の「3度目の正直」実現を目指す。 三菱重工業で「H2A」ロケットの開発に携わった金沢工業大学の森合秀樹教授は「ノズル本体かノズルの駆動部分が問題なのかは定かではないが、不具合が起きやすい場所。失敗からノウハウを学び、民間主導ならではの技術を確立していくことが大切だ」と指摘した。