更年期の倦怠感・意欲の低下は肝機能障害や貧血の可能性も!【更年期症状と間違えやすい病気に要注意! ⑧】
疲れやすい、何もする気にならないといった症状も更年期にはよく見られる。ところが、やはり40歳くらいから増える肝機能障害や貧血ということもあるという。これらの病気について、女性医学の専門医である小川真里子さんに伺った。
更年期女性に多い「非アルコール性脂肪性肝疾患」に要注意!
「更年期症状として、すぐ疲れる、意欲が湧かない、何もする気になれないといった、倦怠感や意欲の低下を訴える人も多く見受けられます。これらの症状は進行した肝機能障害でも起こります」(小川先生) 肝臓の病気といえば、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス性のもの、お酒の飲みすぎによるアルコール性肝障害、薬剤の服用による薬物性肝障害などが思い浮かぶが…。 「それ以外に最近は、特に更年期世代に多いのが『非アルコール性脂肪性肝疾患』(Nonalcoholic fatty liver disease=NAFLD(ナッフルド))や『非アルコール性脂肪肝炎』(Nonalcoholic steatohepatitis=NASH(ナッシュ))です。文字通り、お酒が原因ではない肝疾患です。 この病気になる人は、お酒が飲めない人に多く、スイーツや脂質の多い食事を好む傾向があります。太っていたり、見た目はスリムでも内臓脂肪が多かったり、夕食と寝るまでの時間が短い(夕食が遅い)、運動不足も原因と考えられます。 『お酒は飲まないし、油っこいものも好きじゃない』と言う人が多いのですが、よくお話を伺うと、お酒は飲まなくても食後にスイーツは欠かさない。揚げ物をあまり食べないだけで、脂質はしっかりとっているケースは少なくありません。 肝臓は胃や腸で吸収された栄養素を分解する代謝の役割と、有害物質を解毒したり、消化吸収を助ける胆汁の生成・分泌などの働きがあります。やはり食事の内容は肝機能に影響します」 肝臓は沈黙の臓器といわれている通り、肝機能障害の初期では症状はほとんどないそう。 「倦怠感などが現れるのは、かなり症状が進んでからです。ほかに食欲不振、筋肉痛、発熱、頭痛、吐き気、黄疸(おうだん)などが現れます。 初期段階では症状がないので、定期健診の血液検査が重要になります。注意すべきはALT(GPT)で、肝臓の細胞が破壊されると血液の中に流れ出し、いずれも30(IU/L)以下が基準値です。γ-GTP(γ-GT)は解毒作用にかかわる酵素で、アルコールが原因の場合は血液中に出てくるといわれています。女性は30(IU/L)以下が基準値です。 定期健診で要注意、異常という数値が出た場合は、放置は禁物! やがて肝炎や肝硬変、肝臓がんへと進行することもあるので、早めに内科を受診してください。 治療は有効な薬物療法はほとんどなく、主軸は生活習慣改善です。栄養バランスを整えて、カロリー制限をしたり、週3~4回の有酸素運動と筋トレの組み合わせ30~60分を目安にした運動療法です。 婦人科を受診しても、肝機能が悪い場合は、HRT(ホルモン補充療法)などの更年期の薬物療法がすぐにはできない場合があります。重度の肝機能障害の場合、HRTは禁忌になるので注意が必要です」