81歳・現役医師が元気でいられる秘訣。閉経前後は「自律神経」と「骨量」を整える
自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力し、81歳になった現在も診療に精力的に取り組んでいる、医師・天野惠子さん。そんな天野先生に、今回は「閉経前後で気をつけたいこと」を教えてもらいました。
閉経前後は「自律神経」を整えること
更年期のさまざまな症状は、エストロゲンの欠乏だけでなく、自律神経の働きとも密接に関わっています。 自律神経とは、全身に張り巡らされている末梢神経の1つで、意思とは無関係に血管や呼吸、内臓や体温調節などをコントロールする神経です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、相反する働きをし、脳の視床下部でコントロールされています。視床下部は、自律神経のほかホルモン分泌や免疫という重要な機能をコントロールしています。 更年期になり、卵巣機能が低下してエストロゲンの分泌に支障が生じると、同じ視床下部に支配されている自律神経にも影響が及ぶため、さまざまな全身症状が現れるのです。 ホットフラッシュや冷え、動悸や息ぎれをはじめ、頭痛、不眠、めまいや耳鳴りのほか、物忘れやブレインフォグ、記憶力の低下、うつ状態、胃腸障害などが見られます。 また、皮膚や粘膜の乾燥、嚥下(えんげ)障害(ものを飲み込みにくくなる症状)、尿もれや頻尿なども引き起こします。さらに肩こりや腰痛、関節の痛みなど、多様な全身症状が一気に押し寄せます。 そこで、閉経前後からは、自律神経を整えることを心がけましょう。減少するエストロゲンの量を食い止めることは難しくても、自律神経を整えることで、エストロゲンの急減からくるダメージをゆるやかに保ち、ダメージをやわらげることが期待できます。 自律神経は、規則正しい生活習慣とバランスのとれた食事、適度な運動で整えられます。 栄養と良質な睡眠、休息をきちんととり、体を温め、ストレスをため込まないようにすること。サプリメントや薬を飲むよりも、まず、このことを意識してみることで、さまざまな不調を未然に防ぐことができるはずです。 不規則な生活や無理をあらため、丁寧に自分の体と向き合い、セルフケアに努めましょう。健康的な生活を心がけることで自律神経が整い、エストロゲンのない日常へとソフトランディングすることができます。