アサヒビール、”生ジョッキ缶”を応用したレモンサワーで飲酒体験の新たな価値を醸成「差別化より”独自化”を狙う」
■飲むタイミングで味が変わる? 商品の差別化というより”独自化”
『未来のレモンサワー』は、有糖の「オリジナル」とサワーの液に糖・香料不使用の「プレーン」の2種類のフレーバ―を用意。2023年5月のテスト販売時はオリジナルのみだったが、ユーザーからの意見を反映させ、プレーンを追加している。 「居酒屋で飲むような、あまり甘くないスッキリしたレモンの味のサワーを期待されたお客様から『結構甘いよね』というお声をいただいたんです。我々は、果実味たっぷりを期待されるお客様と、『酸っぱい、苦い』というレモンの味そのものを求められるお客様の大きく2つに分かれると解釈しました。そこでオリジナルに加えて、レモンそのものを味わっていただくプレーンタイプを準備しました。レモンスライスは糖でコーティングしていますが、甘さはほぼなくスッキリとした味わいです。」 このように大別すると2種類の味わいだが、実際には無数に味のバリエーションが存在するという。それはどういうことか? 「乾燥したレモンスライスを缶に入れていますが、たとえば干しシイタケから出汁が出てくるように、レモンスライスから徐々に(レモンの)エキスが出てきてサワーに移っていきます。それによってサワーの味が深まり、香りが高まり、色も濃くなるのです」 つまり、製造後どれくらい時間が経過しているかによって、レモンから染み出すエキスの量が異なり、「同じ商品でも、飲むタイミングによって味が違う」というわけだ。これは今までのサワーにない、全く新しい価値観である。 「通常のサワーは液体だけなので、全て均一の品質になりますが、『未来のレモンサワー』はレモンのサイズや、サワーに浸かっている期間によって味が変わります。1本1本個性があるので、飲む度にお客様に新しい味わいに出会っていただけます。通常、サワーの差別化として『果汁を増やしました』『カロリーを減らしました』というケースはよくありますが、この商品は差別化というよりも”独自化”だと思っています」 以上のことから『未来のレモンサワー』は極めて独自性の高い商品だと言えるが、「ゆくゆくは、これが未来のチューハイ、サワーのスタンダードになってほしい」と山田さんは言う。「未来の」というネーミングには、そんな思いが込められているそうだ。果たして「未来のレモンサワー」は、ネーミング通り、これからのスタンダードとなりうるのか? まずは6月の発売後の動向に注目したい。