アサヒビール、”生ジョッキ缶”を応用したレモンサワーで飲酒体験の新たな価値を醸成「差別化より”独自化”を狙う」
■開発期間は3年半 「液体だけを作るのとはまるで次元の違う難しさ」
『未来のレモンサワー』の開発は、『スーパードライ 生ジョッキ缶』の発売前から着手されていた。それから今年6月の発売まで、実に3年半の歳月を要している。通常RTD商品の場合、開発期間は1~2年というから、今回はかなりの難産だったと言える。 「我々は創業135年になりますが、RTD(缶を開けてすぐに飲めるお酒)において過去に果肉のつぶつぶを入れた商品はあっても、完全な固形物を入れるのは初めて。これは液体だけを作るのとはまるで次元の違う難しさでした。中身の試作はもちろん、それ以外に、原料の調達先であるサプライヤーを見つけないといけないですし、機械メーカーさんに製造のための機械を新たに作ってもらわないといけない。既存のRTD新飲料を発売するのとは比較にならないくらい、そもそも別事業というくらいハードルが高かったですね」 開発プロジェクトでは隔週で全体ミーティングが行われていたが、ミーティングの度に次々と起こる新たな問題点に現場は右往左往していたという。 「たとえば『レモンスライスをうまく作れましたが、輸送中にほぼ割れました』『レモンスライスを作って置いていたらカビました』といったことが多々起こるんです。それなら温度は何℃で、湿度は何%で保管しないといけないのか? 輸送時にはクッションを巻くのが良いのか? と一つひとつ検証しつつ、またゼロに戻ってやり直す。『今度はいける』と思ったら、また違うところで問題が出てくる……そういう話は山のようにありました。 でもプロジェクトに関わるメンバーはそのたびにトライ&エラーを重ねてみんなで乗り越えてきました。我々には『お客様がワクワクすることに向けて頑張りましょう』という基本思想があり、みんなそのマインドを持ち合わせているから、頑張れたんだろうと思います」 開発初期には、社内でも「もう無理だからやめとこうか」という反対意見も多かったそうだが、それを乗り越え、ようやく発売目前にまでこぎつけた。 「当初は、みんな『なんでこんな面倒くさいことをやるんだ』という思いが正直あったと思います。でも今SNSなどの反響を見て、多くの皆さんにご期待いただけていることを実感しています。これから発売されたら、どんな評価をいただけるんだろうかと、『生活者の皆様をワクワクさせたい』という私たちが今ワクワクしている状況ですね」