なぜ落選?!球界重鎮が野球殿堂に警鐘鳴らす
シークレットの特別表彰委員会メンバー
また元高野連会長としてプロアマの雪解けに尽力された脇村氏が選ばれた特別表彰に関しても問題点が浮上した。 昨年10月に、福島で作曲家の故・古関氏の「殿堂入りを実現する会」が立ち上がった。巨人の応援歌「闘魂こめて」や阪神の「六甲おろし」などを作曲した故・古関氏の特別表彰での殿堂入りを目指すムーブメントが起き、実際、推薦状が提出されたが、そもそも投票の対象となる9人の候補者にさえ入っていなかったのだ。 特別表彰は(1)現役を引退したアマチュア野球の競技者(選手、コーチ、監督)で、選手は引退後5年、コーチ、監督は引退後6か月以上経過している人。(2)プロ及びアマチュア野球の審判員で、引退後6か月以上経過している人。(3)プロ及びアマチュア野球の組織または管理に関して野球の発展に顕著な貢献をした人、しつつある人(4)日本の野球の普及及び発展に顕著な貢献をした人、しつつある人が対象者で、特別委員会の14人が3人連記で投票して75%の得票が必要になる。 古関氏は、(4)に該当するとして、殿堂入りへの推薦が関係団体から行われたが、投票前の候補者選びの段階で切られた。過去には 2009年に、日本野球の発祥の地に関する研究をして、「日本野球創世記」を発表した故・君島一郎氏、2002年には、2年間だけ特別に設けられた「新世紀特別表彰」として、野球を題材とした短歌、俳句を数多く詠み「野球(のぼる)」の雅号も使った文豪の故・正岡子規氏が選出されている。 今回も「あぶさん」「ドカベン」などの野球漫画で野球人気を盛り上げた漫画家の水島新司氏が候補者に入って5票を獲得した。その意味で、野球界に多大な貢献をした文化人が殿堂入りするための門戸はあるのだが、まず候補者を選ぶ14人の特別委員が誰であるのかが明らかにされていない。 議長の池田哲雄ベースボール・マガジン社・社長以外はシークレットで、候補者のどこまでを(4)の定義にあてはめるのかも曖昧で、過去に東京六大学、東都大学の出身者ばかりが選出されている、との批判の声もある。 特別委員会の14人の中には、プロ野球の重鎮も複数いるそうだが、その“密室感”や選出基準の曖昧さは、本来問題にされるべきだろう。 広岡氏が、訴えるように殿堂入りの権威を高めるためには、オープンな議論をもっと活発に行い、名球会との違いをも明確にわかりやすくファンに伝えることだ。 権藤氏は「一世一代の晴れ姿」と通知式で語ったが、皮肉屋の彼さえも感動させる権威と意義が殿堂にはあるのだ。伝統を継承。野球界の未来への指針を示す場所でもある。 ドラフト指名された新人が、そろって「殿堂入りを目指します」というような殿堂にしていかねばならない。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)