「意識高い系」で台頭したNewsPicksが直面する試練、戦線拡大で〝とがった記事〟が減少
デジタル化の潮流を捉え「意識高い系」のメディアとして台頭したスマートフォン向けニュースアプリ「NewsPicks(ニューズピックス)」。経済分野を中心とした大型の特集記事や、メディアアーティストの落合陽一氏を起用した動画番組などを配信して存在感を高めてきたが、最近は有料会員数の伸びが鈍化。成長への懸念から株価が低迷するなど、サービス開始以来、最大の試練に直面した。 運営会社のユーザベース(東京)は2月に東京証券取引所グロース市場の上場を廃止し、米投資ファンドのカーライルの傘下に入った。メディアとしての価値に磨きをかけ、再上場に向けて再起を図る。消費者の自由な時間を巡るサービス合戦が激化する中、行く末はいかに。(共同通信=仲嶋芳浩) ▽100年に1度の大変化の時代 ニューズピックスは2013年にサービスを始めた。提携する雑誌や通信社のニュースをスマホのアプリでまとめて読むことができ、実業家の堀江貴文氏や元経済財政担当相の竹中平蔵氏ら著名人が記事への批評や感想を投稿するコメント欄の存在が注目された。各分野の最前線で活躍する人を取り上げた「イノベーターズ・トーク」などの連載も人気を博した。 「東洋経済オンライン」の編集長などを務め、2014年にニューズピックス編集長に就いた佐々木紀彦氏は「メディア業界に100年に一度の大変化が訪れている。大変化の時代の中で、テクノロジーとソーシャル、コンテンツの力を組み合わせることで、世界最先端のメディアを育てる」とぶち上げた。
ニューズピックスは佐々木氏の下で攻勢を強める。2016年には「週刊ダイヤモンド」で鳴らしていた池田光史氏ら3人の記者を迎え入れると発表し、「企業・産業チーム」を創設して調査報道を強化。日米の株式市場への上場計画が遅々として進まない注目企業の実態を暴いた連載「LINE韓日経営」などを放った。後にニューズピックスの編集長に就いた池田氏は、2021年の共同通信のインタビューで「人に焦点を当てた連載も人気だったが、次の成長ドライバーとして企業・産業報道が加わった。大きなテーマを真正面から取り上げたかった」と振り返った。 社会人や就活生に「必携」とうたうニューズピックスは、魅力的なコンテンツを武器に有料会員数を着実に増やした。2019年6月末の会員数は10万人を突破。その後、新型コロナウイルスの流行で情報の需要が高まったことも追い風となり、1年後の2020年6月末には1・7倍の17万人に急増した。