「意識高い系」で台頭したNewsPicksが直面する試練、戦線拡大で〝とがった記事〟が減少
▽「可処分時間」の奪い合い激化、株価は4分の1以下に だが、最近は「ネットフリックス」などの動画配信サービスやゲームとの間で「可処分時間」の奪い合いが激化。2022年末時点の会員数は20万人弱と伸び悩んだ。2020年秋に4千円を超えていた株価は、2022年に入ると千円を下回って取引される場面が増え、短期的な収益の確保を求める株主からの風当たりも強まった。 こうした状況を受け、持続的な成長に向けた経営基盤強化のため、株式の非公開化に向けた検討を開始。国内外で投資実績が豊富なカーライルの買収提案を受け入れることを決めた。 ニューズピックスについて、読者からは「最近はここでしか読めない記事が少なくなった」(IT企業の男性社員)との声がある。カーライルの小倉淳平マネージングディレクターは「有料会員数が増えていることを市場に示さなければならず、ひずみが生じていた。ニュースで取り扱う話題のジャンルが増え、戦線が拡大していた」と分析し、ニューズピックスならではの“とがった”コンテンツが目立たなくなっていたと指摘する。非上場化で足腰を強くした上で、着実に成長する状態に切り替える必要があると説明する。
▽動画配信を強化、活字を敬遠する層を開拓 ニューズピックスは2023年4月、「新しい視点を集めて、経済の未来をひらく」ことを会社の使命にすると発表した。佐久間衡・共同最高経営責任者(CEO)は、投稿した記事の中で「目指す世界は『分断ではなくつながり』、『固定ではなく変化』、『行動する勇気』が多くの方に生まれること。そのために決定的に重要なことは『新しい視点』との出会いだ」と強調した。 ニューズピックスの売りの一つがコメント欄だ。ヤフーニュースなどにも同様の機能はあるが、ニューズピックスでは経営者や中間管理職、有識者、学生ら多彩な顔ぶれが実名で意見を交わす。カーライルの小倉氏も、コメント欄を一段と活性化できれば、多くの人が集い、つながりを生み出す場にできると見定める。 動画配信も一段と強化する方針だ。動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信した番組がきっかけでニューズピックスのアプリをダウンロードし、有料会員となる利用者が一定数いるためだ。最近では、所属する記者が注目のニュースについて解説する取り組みを始めた。活字を敬遠する層の開拓も目指し、知的好奇心を刺激するコンテンツを増やす。