「かわいいし面白いから楽しい時間」三姉妹の長女を演じた江口のりこが語る、魅力的な家族のエピソード
反抗期は35歳くらいになってから来た
──映画では母との関係性も描かれていましたが、お母さんとの関係はいかがですか? 母が何かを強制してきたことはないし、うちの家族はいい家族だなって思ってます。だからなのか、反抗期も遅かったですね。35歳くらいになってから来た。だいぶ大人になってから、母に反抗したくなってしまう時期がありました。 ──それは何か、理由があったんでしょうか? 何に対してイラッとしたかというと、子供扱いするところかな。「もう大人なのに」って。いちばんイラッとしたのは、たけのこの季節にたけのこを一本丸ごと買って、たけのこご飯を作ったという話をしたら、母が「えらいねぇ」と言ったこと。こうして話すとめちゃくちゃしょうもないことじゃないですか。 でも「そんなことで褒めてくるなんて、まだ子どもだと思ってんの?」とすごく腹が立ってしまった。当時はそれに腹を立てる自分のことも嫌になりました。嫌いなわけじゃないのに、イラッとしてしまうことがある。それは家族ならではの感情なのかもしれない。不思議ですよね。
自分の正体みたいなものは知らせないほうが絶対にいい
──こうした家族をテーマとした作品だと特に、いまのように江口さんご自身の家族の話を伺ってしまいます。どんな作品でも「役に近づくためには」とプライベートなことを聞いてしまうことがあります。こうやってインタビューで自身のことを聞かれることについて、江口さんはどう思ってらっしゃいますか? 私、本当に不思議だったんですけど、「あなたと、演じた役との共通点は」という質問、よくあるじゃないですか。なんでそんなこと聞くのかなと思うんですよ。 ──たしかに、聞いてしまいます。 でも、それを聞くことによって、「あなたってそういう人なんですね」というのをとっかかりに話が広がる。そういう目的があって質問されるのかなと、ある時納得したんですけど。まあ、どの役も演じたのは自分自身だから、自分の話はしなきゃしょうがないですよね。 ただ、こういう俳優業をやっていると、自分の正体みたいなものは知らせないほうが絶対にいいと思っています。知らせていいことなんてひとつもないと。ただ、こうして取材を受けているからには、「いや別に」と言ってる場合じゃないですから、「これだったら話してもいいか」ということを話しちゃうわけですけども。 ──では、自分のことを話したり、書いたりすることについては決して積極的ではない? 自分の考えとか思いをエッセイにしようとか、そういうことは思わないですね。俳優さんが書かれたものを読むのは好きですけども。 ──自分の言葉を発するのは、やはり俳優という仕事の中で役としてさまざまな言葉を発することとは、まったく別の感覚ですか? 役の発言は、もうそれは人が考えたセリフですから。「つまんなかった」と言われても、「私関係ない」と思えますからね(笑)。でも、バラエティだったり、そういう風な場所って、自分から出た言葉で自分が責任持たなきゃいけない。そういう違いですかね。