看取り医が頭を抱えた!「私たちは普通の母親が欲しかった」…家を出た娘が明かす「石や包丁を投げる」天才三味線奏者の素顔
父もまた被害者
娘たちが怯えて暮らし、家から離れていった一方で、父である武夫さんは暴力を振るわれながらも、甲斐甲斐しく華絵さんの面倒を見続けている。尚子さんに理由を聞いてみた。 「私も父がどうして母にあそこまで尽くすのかがわかりません。あれだけ母に尽くしても母からは何ももらえない。三郎さんも同じです。奴隷のようにしか扱われないのに慕っている。私には理解できません」 「父と母は職場のサークル活動で知り合ったと聞いています。父が車の免許を取って母を同乗させていたとき、事故を起こした。母は頭を打ちつけ、その頃から少し手の震えのようなものが出るようになったようです。 気が合って結婚というより、父が責任を感じての結婚だったのではないかと私は思っています。私が小学生の頃まで祖母が生きていましたが、祖母が事故を起こした父の弱みや優しさに目をつけてまとめた縁談だったと思います」
たった1年で津軽三味線のプロに
尚子さんは母・華絵さんの人格を否定し続けたが、一方で、津軽三味線の腕前については認めていた。 「母が40歳を超えた頃、友人からチケットをもらい父と母は演奏会に出かけ、初めて津軽三味線を聞いたのですが、コンサートから戻ってきた母は、憑りつかれたように聞いた楽音を口で演奏し始めたのです。その正確さに父が驚き、父が寄り添う形で母は津軽三味線の口座や教室をまわりました。 母の性格の難しさなのか、4ヵ所でクビか出入り禁止になり、5ヵ所目の教室でやっと落ち着きました。その後も母は何かが憑依したかのように寝ずに練習を行い、気づいたときには師匠のレベルになっていました。私たちも驚きましたがたった1年でプロとして演歌歌手のコンサートで津軽三味線の奏者として演奏をしていました。 あの人…新聞の字もあまり読めていないのに、三味線の演奏は一度聞くだけで完コピしてしまうから、譜面を見ずに何百曲も演奏し再現できるんです」 武夫さんはそれに喜び、「少ない給与の中から高価な三味線や着物を何度も買ってあげていた」そうだが、「母が父に感謝することは一度もなかった」という。 社会性に乏しく、軽度の精神遅滞がみられ、しかし三味線を持たせると天才的な一面をみせる――。 華絵さんについて、私は「サヴァン症候群」ではないかと考えた。
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