【独自】15年ぶりの映画監督 浅野忠信が語る “クリエイターの矜持” 最初の観客は「撮影現場」にいる
Q:比較する話では もちろんないと思うのですが、エミー賞を獲得した「SHOGUN 将軍」という作品があって、「男と鳥」のような作品があって、後者は予算が限られていたり、時間も限られていたり、ビジネス規模の大きい方の仕事だけで満足する人はいると思うのですが、なぜチャレンジングなことをしようと思うのでしょうか? 浅野:まさに今 言った話だと思うんですけど、ある時に、「モンゴル」って映画を撮っていた時だと思うのですが、パッケージの話じゃないんですね。映画館で流すから映画… ってわけではない。 というのは砂漠のような街で、小さいインターネットカフェがあって、そこで子どもたちが集まって、一つの画面にかぶりついてダウンロードした映画を見ていたんですね。 この子たちが、こうやって「喜びを持って映画を見てる」ってことが一番重要だし、なんか…ここに届かないんだったら、映画じゃないな…と思ったんですね。 その時に、何か自分の中で「余計なタガ」が外れて… 作品が大きいからとか、小さいからとかじゃなくて、僕が「何かできそうだ」とか、「やってみたい」とかっていうことがあれば、そこには何か共通した「映画的な要素」は生み出せるんじゃないか…っていうのはありますけどね。 Q:今 タイパ(タイムパフォーマンス)だとか ドラマ等を「早送り」で観る人もいる時代ですが、作品の視聴動向に対する、自身の想いを伺ってもよろしいでしょうか? 浅野:なぜ「早送り」するかっていうと、まさにそうやって決められたルーティンの中で映画を作っているからだと思うんです。僕も2倍速で子どもたちが映画を見ているって聞いた時に、「だよね!」って、2倍速で映画を見ましたし・・・ なぜなら、僕を釘付けにする「何か」が、そこにはなくて、ただただ「内容を確認したいだけ」ってなっちゃっているわけですよね。でも、こっちがやっぱり心がけるべきは、「気づいたら見ちゃった」ってものを作らなきゃいけないから、そういう意味では「現場」で笑いが生まれていなければ、やっぱり「倍速」で見ちゃうと思うんですよ。 でもそれって、「現代的で面白いな」と思うし、だったら最初から倍速の映画を作っちゃえば良いし、もしくは、こうやって短編とかで どんどん映画を流すべきだと思うんで、(長編映画は)約2時間… っていうルールはね、なんか本当に 誰かが勝手に、いつの間にか作っちゃったものだから、それは本当にいらないな…と思いますけどね。