【独自】15年ぶりの映画監督 浅野忠信が語る “クリエイターの矜持” 最初の観客は「撮影現場」にいる
Q:監督・脚本を務めた「男と鳥」。 登場人物のキャラクター、何か発想のきっかけはあったのでしょうか? 浅野:まず、どういう物語にしようかなと思って、男が出てきて、こういうことをして…みたいに書くんですけど、書いていた時に阿部さんと「SHOGUN 将軍」っていう作品で、カナダにいて、もし続編があったら、「ゾンビ侍」っていうのがいたら面白いよね… みたいな雑談をしていたんです。この作品とは関係なく…。 その後、映画に出てくる男を「ゾンビ侍」にしちゃおう…とか、短編映画を「コマ撮り」で撮影することを決めて、「ずっと飛んでいる存在」がいたら面白いので、それはやっぱり「鳥」かなとか… 単純なアレなんですけど、ロケ地が秋田で「なまはげも『ご出演』できそうです」っていう話も聞いていたので、神様は絶対になまはげで!とか…(注:実際「男と鳥」に出演している神様は 秋田・下浜地方の「やまはげ」がモチーフ) だから、本当に偶然が重なって、何かいろいろ試させてもらって…という流れです、はい。 Q:脚本(浅野さんは「男と鳥」で監督・脚本を担当)は事前に固めないで、撮影現場で即興的にアイデアを活かしながら撮影したと聞きましたが? 浅野:そうですね、はい。俳優をやっていたおかげで、俳優で普段現場にいると、やっぱり「確実に出来上がるもの」を作りますし、「一つのゴール」に向かってみんなが向かうじゃないですか… ただ、「それが果たして正しいのか?」って思う時もあるんですね。 というのは、本来 映画っていうのは 何か出来上がるためのモノを撮る…っていうよりは、その日その日に、いかにスタッフとか俳優とか監督も含めてみんなが「何かを感じられるか」っていうのは、とても重要だと思っているんですね。 映画の日々の撮影において「ただこなす」という事より、日々「何かを感じ続ける」という事は、ものすごく難しい… 難しい作業だと思うのですが、それを「絶対に心がけなきゃいけないな」と思ったんですね。 ですから、僕の脚本なんか、どうでもいいですし、極端に言ったら「作品が出来上がらなくても良い」と…。それよりも、いかに今日、スタッフみんなが笑うか、とか… 考えるか。考えた結果が、何か花開くか… ということを、僕はやっぱり監督として心がけなきゃいけないと思ったんです。 現場では、やっぱり皆さんから色んなアイディアが出るし、そのアイデアで作品がどんどん色濃くなっていくことを実感できたので面白かったです。