「 Cookie廃止 後、ゼロパーティデータとAI活用が鍵に」:株式会社ZEALS 遠藤竜太 氏
ーーサードパーティCookieなきデジタルにおいて、(単なるCookieの代替ではなく)重要になるものはなんだと考えますか?
サードパーティCookieがないデジタル環境では、各ブランドが消費者と直接コミュニケーションできるチャネルを構築し、一人ひとりに合った体験を提供することが重要です。そのためには、Web広告だけでなく、SNS、メール、オフラインなどの多様なチャネルを活用して、さまざまなタッチポイントで個別的な体験を提供できる仕組みを構築することが求められます。 個別的な体験には、コミュニケーションが複雑化します。消費者からすると、「親身になって疑問に答えてくれた」「私のために提案してくれた」「自分の趣向に合った商品を提案してくれた」と感じられるような、パーソナライズされた提案をすることが重要です。 具体的な方法として、広告を見た人に対して好みや実現したいライフスタイルを尋ね、その情報を基にパーソナライズされた提案を行うことが考えられます。また、Webサイトから離脱した人に対して、離脱の理由を聞き、不安や懸念の払拭を行うことも有効です。 さらに、購入者からリピーターを作り、リピーターをロイヤルカスタマーへと育てていく関係性の構築も重要です。このように、消費者にとって意味のある体験を追求するためには、コミュニケーションデザインを熟考し、多様なチャネルを通じてパーソナライズされた提案を行うことが求められます。 AIの活用により、顧客の行動や嗜好に基づいた超個別化されたマーケティングが可能となり、消費者との強固な関係を築くことができます。
ーー今後重要となるサードパーティCookie消滅がもたらすネガティブ、ポジティブ(対パブリッシャー、ブランド、ベンダー問わず)はどのような点にあるでしょうか。
ブランドにとっては、何のデータを取得しているかというよりも、顧客からデータを提供するくらいリレーション構築しているか、そのために的確にエンゲージメントしているかどうかでマーケティングの精度が変化していくのではないでしょうか。つまり、消費者との関係を大切にし、得られたデータを適切に管理し、AIを駆使してハイパーパーソナライズされた体験を提供する企業が優位性を持つようになります。 一方、ベンダーやパブリッシャーサイドにはネガティブな影響が出るでしょう。特にサードパーティデータに依存したサービスを提供している企業にとっては、依存しないパーソナライズされたマーケティングの仕組みを新たに構築する必要が生じるため、技術的および運用上の課題が増えると思います。 さらに、消費者にとっては、自分が提供するデータを決めるという方向転換が起こります。これがポジティブかネガティブかは評価が難しいですが、消費者はよりコントロールを持ち、プライバシーを重視する動きが強まることは確かです。 消費者からせっかくいただいたデータを活用してインサイトを導き出すためには、各タッチポイントやチャネルで理想的なコミュニケーションを考え抜く必要があります。AIの活用により、コミュニケーションデザインの自動化が進み、企業はより顧客体験の提供に注力し、消費者との信頼関係を強化することが可能となるでしょう。
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