「足場固め」のトヨタ、26.4%減益は自信の表れ、「足場固め」のトヨタ、26.4%減益は自信の表れ
トヨタはコロナ禍の2021年3月期以降、このバリューチェーン収益を毎年1500億~3300億円の幅で拡大してきており、2025年3月期も前期比で増加額が1400億円となる見通しを示した。 バリューチェーン収益が伸びている背景には、トヨタが販売会社を通じて管理する「掌握台数」の増加がある。掌握台数とは、メンテナンスパックの獲得によって、継続的にタッチポイントを持つことができる顧客数を指す。この掌握台数を増やすことで、顧客に対して補給部品や用品を提案できる機会も増え、結果、バリューチェーン収益が拡大するというわけだ。中でも、ヨーロッパではメーカー保証の延長サービスが顧客からの支持を得ており、同様の取り組みをグローバルで拡げていくという。
トヨタがこのバリューチェーン収益を重視するのは、将来的な電動車時代を見据えていることがある。今後EV(電気自動車)を軸に先進性を前面に押し出した車両が普及すれば、ソフトウェアによって購入後も機能や性能を向上させるサービスの需要が高まることが予想される。 無線通信によってソフトウェアをアップデートするOTA(Over The Air)などが代表例で、こうしたサービスは新車の販売後も継続的に稼げる新たな収益源として各社は開発競争を加速している。
電池コストがかさむEVは車両価格が同クラスのエンジン車に比べて100万円単位で上昇することが避けられない。市場全体での新車販売台数は自ずと減少するため、どのように利益を確保していくかが業界で共通の悩みとなっている。トヨタとて、EV比率が今後高まっていくと現在と同水準の利益を稼ぎ出すことは容易ではない。そこで従来とは異なる収益として期待されているのがソフトウェアサービスというわけだ。 もっとも、グローバルでEVシフトは鈍化しており、どのタイミングでEVの普及が本格化するかはわからない。宮崎副社長は「最終的に商品を選ぶのはお客様。そのために、お客様の選択に柔軟に合わせていける構えを賢く構築していく準備を進めている」と語り、EVへの投資判断や生産計画はギリギリまで見極める姿勢を強調した。
いつかはやってくる本格的なEV時代に向けて、生産現場やサプライチェーンの"足場を固め”、販売サイドではバリューチェーン収益を育てていく――トヨタの地道な体制づくりはしばらく続く。
横山 隼也 :東洋経済 記者