今夏始まる富士山の入山規制、海外メディアも注目、山梨県知事「オーバーツーリズム対策に一石、全国のモデルケースに」
2024年7月1日に山開きを迎える富士山。登山口のある山梨県、静岡県は、手法は異なるものの両県ともに今年から登山者の管理を開始する。国内外の登山者による山頂付近の深刻な混雑や弾丸登山によるマナー違反など、オーバーツーリズムへの対策。6月19日に山梨県がメディア向けに公開した入山規制のリハーサルには、海外7社を含む30のメディアが集まり、国内外からの注目度の高さを示すものとなった。 リハーサルに参加した山梨県の長崎幸太郎知事は、今回の入山規制が登山者の安全を守るために登山者の分散化を図るものであることを強調。そして、「オーバーツーリズム対策に一石を投じたい。全国のモデルケースになるべく、7月1日に向けて準備を進める」と意気込みを見せた。 長崎知事は、リハーサルに先んじて6月17日に海外メディア向けの記者会見も実施。将来展望として、富士登山を単なる登山でなく、富士講の歴史や地域のストーリーを楽しむ高付加価値化をしていくことや、5合目からだけでなく山麓からの登山再興したいを考えを説明した。また、県として策定している「富士山登山鉄道構想」の実現によって、「世界レベルの観光エリアの形成を目指す」考えを示した。
今年始まる対策とは?
山梨県側の登山ルート「吉田口登山道」は、山梨県が5合目の登山口に入山規制のゲートを設置。通行料2000円を徴収、1日の登山者上限を4000人として16時から翌午前3時まではゲートを閉鎖する。登山当日の受付のほか、5月20日から事前のオンライン予約を開始。県によると、7月19日段階で今夏の予約者数は2万人を超え、件数は約6700件となっている。 なお、今年設置されたゲートは仮設のもの。来年度には常設ゲートをつくる予定で、長崎知事は「堅牢で信仰の山にふさわしいデザインにしたい」との考えを示した。 一方、静岡県側の登山口(富士宮・御殿場・須走ルート)は、通行料は無料で人数規制は行わないが、事前の登山計画の提出と富士登山のルール・マナーについて事前学習が必要となる。オンラインでの事前登録をおこなえば、スムーズに入山することができるが、事前登録がない場合には各登山口五合目でビデオ視聴などによる登山前学習が必要になる。 山梨県、静岡県の両県の今夏の対策は、登山道や土地を管理する主体の違いによって手法が分かれた。通行料は山梨県は徴収、静岡県は無料。富士山保全協力金(1人あたり1000円)については山梨県が任意、静岡県は支払いを求める。 両県では、今夏の結果を検証・分析し、来年以降の改善につなげる考えをしめしているが、今後、富士山というひとつの山での対応が、登山口によって違う状況が改善されることが求められる。
トラベルボイス編集部