明後日J1再開…ヴィッセル神戸の”至宝”イニエスタは浮沈カギ握るFWドウグラスに何を授けたか?
ハーフウェイライン付近から開始した前半26分のドリブル突破で2人をかわし、FW北川航也(現ラピード・ウィーン)の先制ゴールをアシストしたドウグラスは、同点で迎えた後半23分には決勝点となる豪快なヘディング弾を一閃。ヴィッセルへ与えた強烈な印象が、ビジャやポドルスキ、ウェリントンに代わるストライカー獲得を急務としていたオフの補強戦略と合致した。 ドウグラスがエスパルスへ加入したほぼ同じ時期に、FCバルセロナからヴィッセルへ加入して世界中を驚かせた”レジェンド”アンドレス・イニエスタがJ1の舞台でデビューを果たしている。 「彼からパスを受けてゴールを決めることは、どんな選手でも経験したいと思っているはずだ」 ストライカーと呼ばれる選手ならば誰でも世界最高峰のパスの供給役とコンビを組みたい。敵味方の垣根を越えてイニエスタに憧憬の念を抱いてきたドウグラスは、実際に同じユニフォームに袖を通したいま、間近にいるイニエスタから何を感じているのか。 その質問にドウグラスは思わず苦笑いを浮かべた。 「ちょっと(答えるのに)難しい質問だけど……多分、彼のプレーを見た人が思うのと同じことを自分も感じています。彼は本当に才能あふれるプレーヤーなので、そういうプレーの数々を見たときに、素直に抱くような感情ですよね。そのような選手の味方としてプレーできることを、このような(ヴィッセルという)場所に自分がいられることを本当に嬉しく思っています」
2人はシーズン初陣で、すでにホットラインを”開通”させている。J1王者と天皇杯覇者が対峙する開幕前の風物詩として、2月8日に行われたFUJI XEROX SUPER CUP。後者として横浜F・マリノスに挑んだヴィッセルは前半27分に、イニエスタのスルーパスからドウグラスが先制点をあげた。 左サイドからドリブルで右斜め前の相手ゴールへ迫ったイニエスタは、ペナルティーエリア付近で意図的にスピードを緩めて右へ旋回。目の前にいたマリノスのセンターバック、チアゴ・マルチンスと畠中槙之輔の間に生じたボールひとつほどの隙間へ正確無比なパスを通した。 「彼とプレーできることは、本当に幸せなことだと思っている。ヴィッセル神戸で決めた最初のゴールが彼からのパスだったことは、なおさら自分を嬉しい気持ちにさせてくれる」 天皇杯に続くタイトルにFUJI XEROX SUPER CUPを加えた試合後に、笑顔をはじけさせてから約5カ月。新型コロナウイルスによる自粛期間をへて、エスパルス時代にもゴールを決めた古巣・サンフレッチェ戦へ向けて最終調整に入ったドウグラスにあらためて聞いてみた。今シーズンのカギを握るホットラインに磨きをかけていく上で、イニエスタから授けられた言葉といったものがあるのか、と。 「ピッチのなかでコミュニケーションを取るなかでありふれたテーマというか、チームのことを前提に彼とはいつも話をしている。覚えていることをひとつあげれば、このチームへ来たばかりのころには、自分ができるプレーを自由にやってほしい、ということを言われました」 マリノス戦でのゴールを振り返れば、イニエスタがドリブルで迫る間に、ドウグラスは畠中の背後を突いて死角となるファーサイドへ逃れるポジションを取りながら、次の瞬間、ニアサイドへ方向転換。トラップから利き足の左足で強いシュートを放てる位置へ、イニエスタが絶妙のパスを通した。