トランプとマスクが「ケンカ別れ」するXデー、蜜月に水を差す重大リスクとは
● トランプ次期政権への影響強めるマスク トランプ氏は、閣僚候補者に忠誠を誓うよう求めたと報じられている。トランプ氏自身、「1期目の政権運営で、ワシントンにおける人間関係など多くのことを学んだ」と発言している。 そうした中で、トランプ氏への影響が注目されるのがマスク氏だ。大統領選挙の間、マスク氏はSNSのXでトランプ氏に有利な情報を拡散した。トランプ氏勝利の立役者は、マスク氏との見方もある。 マスク氏は、DOGEという新しい組織の共同トップに任命された。マスク氏は政府の無駄な支出を削減して、短期間で行政の効率化を実現すると主張している。重要なポイントは、歳出の削減がマスク氏の本当の狙いであるか否かだ。 米国の憲法では、いかなる歳出の削減も議会の承認が欠かせない。また、トランプ氏はアジェンダ47に、社会保障や高齢者向け医療保険(メディケア)、国防費は削減しないと記している。マスク氏が主張する歳出の削減は、民主党政権が実行した半導体などの補助金政策、メキシコ・カナダなどで組み立てたEV向けの税優遇阻止の廃止などがメインになる可能性が高い。 むしろ、マスク氏はDOGEを諮問委員会のように使い、規制が米国企業の成長を妨げていると主張を強める可能性は高い。規制を緩和すれば米国の経済は成長できる。経済成長で税収は増え、財政も健全化に向かうとトランプ氏にアドバイスをするかもしれない。 規制緩和は、マスク氏の利得につながる可能性もあるだろう。EVや充電インフラをはじめ、スターリンクの衛星通信ビジネスや、AI(人工知能)ビジネスのための発電(核融合発電やシェールガスを用いた発電)などは、規制緩和が焦点となりそうだからだ。マスク氏はロケット発射などのために、国有地利用に関する規制緩和を重視しているとの報道もあった。 過去、マスク氏はバラク・オバマ元大統領など民主党を支持する姿勢だった。しかし、コロナ禍でテスラのカリフォルニア工場(ギガファクトリー)の一時休止を巡り、州知事と対立したことがあった。マスク氏は自らのビジネスに有利な環境の実現を目指し、次期政権への介入を強める可能性もある。