トランプとマスクが「ケンカ別れ」するXデー、蜜月に水を差す重大リスクとは
● SNSなどから読み解くトランプの頭の中 閣僚人事、政策方針などに関するトランプ氏の基本的な考えは、「アジェンダ47」と呼ばれる公約集や、SNS投稿などから類推できる。同氏の経済と通商に関する政策方針として、貿易相手国に一律10~20%、中国には60%などの関税を適用すると明言している。 鉄鋼や医薬品などの重要品目は対中輸入を段階的に止め、米国企業の対中投資を阻止する制度も導入する。化石燃料の生産増など規制緩和、減税の延長にも取り組むもようだ。 製造業を米国内に連れ戻して雇用を増やし、物価高騰は克服できるというのがトランプ氏の経済政策方針とみられる。米中の経済での相互依存度が高いことを考えると、米国ファーストの政策は世界経済にとって相応のリスク要因だろう。 トランプ氏は、ウクライナ戦争を直ちに停戦させ、米国がウクライナに提供した支援の補償を欧州に求める方針だ。過去、同氏はウクライナの領土の一部割譲も検討したと報じられた。自著などで「取引の達人」と自らを評するトランプ氏は、欧州諸国に対等な防衛負担を求め、それをきっかけに米国の防衛産業の収益増加を狙う可能性もある。 実際の政策は、アジェンダ47よりさらに強硬になるだろう。一例として11月25日、トランプ氏はSNSに、「中国からの輸入品に10%、カナダやメキシコについては25%の追加関税を課す」という考えを投稿した。カナダとメキシコの関税は、従来の主張よりも高いものだ。 近年、メキシコ国境を越えて米国に不法入国する中国人が増えている。中国からメキシコなどを経由して流入する合成麻薬(フェンタニルなど)も増加している。対中引き締め策の徹底、米国での自動車関連部品の生産を増やすためにも、トランプ氏は関税政策を重視しているようだ。比較優位性の原則に基づいた貿易取引の安定や効率化よりも、「貿易赤字は負け」というのがトランプ氏の基本的な考えなのだろう。