ユニクロがヨーロッパで存在感、好調の理由とは?
「ユニクロ(UNIQLO)」の欧州地域での存在感が増している。ファーストリテイリンググループとして過去最高業績を更新した2024年8月期(2023年9月~2024年8月)の通期実績では、売り上げ収益で2765億円、営業利益で465億円。前期比はそれぞれ44.5%増、70.1%増で、ともに全地域でトップの伸び率となった。 【画像】「ユニクロ ローマ コルソ通り店」 外観
ユニクロは、2001年にイギリス・ロンドンに1号店を出店し欧州に初進出。イギリス国内の店舗を3年間で50店舗まで広げることを目標に展開してきた。不採算店舗の増加により2003年に事業を大幅縮小したが、2007年にはグローバル旗艦店となる「311オックスフォードストリート店」をロンドンに出店。その後はパリやスペイン、スウェーデン、イタリアなどに店舗網を拡大し、現在ではヨーロッパ11の国で計79店舗を展開している。 飛ぶ鳥を落とす勢いとも言える欧州事業だが、好調の要因は何なのか。広報担当者に聞くと、3つのポイントがあるという。1つ目は、顧客層の変化。地域全体の売り上げ収益が845億円だった2019年8月期の数字では、メンズが50%、ウィメンズが45%、その他5%と、メンズ売り上げがウィメンズを上回っていた。しかし、ブラトップ、ワイドパンツ、バッグ類などトレンドを捉えた商品提案を強化したことで、ウィメンズの売上構成比が大きく上昇。2023年8月期にはメンズ44%、ウィメンズ52%、その他4%とウィメンズ売り上げが過半数を超え、売り上げ収益も1913億円まで伸長した。広報担当者は「欧州はウィメンズの市場規模が大きく、まだまだ可能性を感じている」と話す。 2つ目は、ユニクロの知名度の向上だ。近年ユニクロは、ポーランドに初の常設店舗をオープンしたほか、イタリア・ローマやオランダ第2の都市 ロッテルダムに初出店。そのほか、スコットランドのエディンバラ、フランス有数のリゾート地 ニースなどにも店舗網を拡大している。純粋な店舗数の増加に加えて、店舗増によりブランド認知が向上し、消費者の購買意欲が促進される相乗効果が生まれたことが好調を後押ししているという。実際に、グローバルのユニクロ実店舗における売上高ランキングトップ10には欧州の4店舗がランクイン。「実店舗が一番のメディアである」というブランドポリシーに則り、歴史的建造物の中に積極的に入居するといった出店戦略もイメージの向上に一役買っていると言えそうだ。 ユニクロ実店舗 売上高トップ10(2024年8月期上期) 1位 ニューヨーク五番街店(アメリカ) 2位 銀座店(日本) 3位 パリオペラ店(フランス) 4位 コルドゥージオ広場店(イタリア) 5位 ソーホー ニューヨーク店(アメリカ) 6位 311 オックスフォードストリート店(イギリス) 7位 リー・シアター店(香港) 8位 カルファー通り店(オランダ) 9位 UNIQLO TOKYO(日本) 10位 ディズニー・スプリング店(アメリカ) 3つ目は、高レベルな店舗体験。ユニクロでは、国内外問わず「常にハイレベルな接客・買い物体験を提供する」ことを掲げて店舗運営を行っている。特に欧州の店舗では、「売り場を綺麗に保つ」「丁寧な接客」といった日本ブランドならではのサービスに、「気さくな挨拶」など欧州の文化を融合。「サービスについては顧客から好意的な意見が非常に多い」(広報担当者)といい、新しい形のサービスが顧客の心を掴んでいる。 ユニクロは、2025年8月期に約15店舗、2026年8月期に約20店舗以上の新規出店を計画。未進出の大都市および新規国への旗艦店出店を加速させ、2027年8月期までに欧州での売り上げ収益5000億円を目指す。広報担当者は「欧州アパレル市場におけるユニクロのシェアは0.5%未満。成長余地は非常に大きい。ブランドと親和性のある国のうち、特に生活圏への出店を強化していく」と語った。