そもそもなぜアメリカの大学はあれほど学費が高いのか――米国「大学不要論」と「学生ローン免除」問題の深層
公立4年制大学の年間平均授業料は地元出身の場合約149万円、私立校では約536万円
日本で折に触れて取り上げられる大学不要論。コロナ後の人手不足に悩む米国ではより切迫感をもって議論されている。実際に一部の州政府が公務員の採用資格要件から大卒を外したのをはじめ、IBMやグーグル、アクセンチュア、バンク・オブ・アメリカ、アメリカン航空など有力企業も多くの職種で大卒資格の要件を廃止した。 一方で、米国における大学不要論は、単なる一時的な労働力需給の引き締まりから生じたものではない。過去半世紀あまりの国策としての高等教育の大衆化が「学費のインフレーション」や「学位のインフレーション」をもたらし、本来の目的であった経済格差解消とは真逆の格差拡大を生んでいるとの超党派の認識から出たものだ。 こうした中、進学しなかった者や学生ローンを借りなかった大卒者から不公平だと批判されるバイデン政権の学生ローン減免大統領令の可否に関する判断を、米連邦最高裁判所が近いうちに示す予定だ。どのような判決にせよ、大学のあり方論争に再び火が付くことは確実だ。転換期に差し掛かる米国の高等教育をめぐる議論を追う。
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岩田太郎