中学受験「子どもの最高の経験」にできる親の特徴 やってよかった!親子ともに成長できる受験に
受験軸は「受験生活の土台」となる
同じ学校に通ったのに、2人の様子はまったく違いますよね。この違いはどこからくるのでしょう。 A君の場合は、何のために受験をするのかという受験軸を持たないまま受験をし、親のほうが「こんな学校にしか行けなかった」という価値観を手放せなかったことがこの結果を招いています。ただ、そのことに、親は気づかないのです。 中学受験は、とりあえずで始めるような簡単なものではありません。時間もお金もかかります。子どもが塾に行く生活が始まれば、送迎やお弁当作りなど家族の負担も増えるでしょう。難しい課題に取り組む子どもの家庭学習のサポートも必要です。きょうだいがいれば、その子の生活にも影響が出ます。 いわば、中学受験は長期間にわたって取り組む「家族ぐるみのプロジェクト」なのです。長期プロジェクトだからこそ、「これだけお金と時間、労力をかけたのにこの結果……」という思考にもなりやすいのが、中学受験の怖さでもあります。 受験沼にハマらず、終わったあとで後悔もしない。「やってよかった!」と心から思えるようになるには、「家族で一貫した受験軸を持つこと」が欠かせません。 •頑張っているのに、子どもの成績がなかなか伸びない •他の子と比べて、子どもの成績にムラがある •子どもが自分で受験を始めたのに、やる気にならない姿にイライラ… •受験や生活のことで、親子でケンカが絶えない 受験軸をつくると、こうした悩みも消えるといったら、驚かれるでしょうか。受験軸は「何のために受験をするか」「どう受験するか」という家庭での軸です。 受験軸がないまま受験に臨むと、子どもが本来持たなくてもいい劣等感を抱いて「自己肯定感」を下げてしまったり、反対に「おかしな優越感」を持ってしまったりすることがあります。「何のために受験するのか」「どう受験するのか」を決めていないため、外部や他者のモノサシに振り回されてしまうからです。 せっかく、子どもによい環境を与えようとトライした受験で、持たなくていい劣等感を抱かせてしまったら、その後の子どもの人生に取り返しのつかない影を落としてしまいかねません。 受験は、その子の人としての育ちの大事な機会になりますが、やり方を間違えるとしこりを残すことにもなりかねません。そして、中学受験では、そのどちらになるかを左右するのは、親の関わり方が大きいのです。 そこで私は、一貫して受験軸を持つことを提案してきました。何のためにという目的を持つこと、そして、目的を達成するためにどうするのか考えて行動に移していくこと。さらに違ったと思ったら軌道修正して、自分のベストを見つけていく。 これは受験だけでなく、その先の人生でも役に立つ考え方です。受験を通してそれを体得できたら最強です。人生の中には、振り返ると「あのとき、あのことがあったから今がある」というような出来事があります。 今、お子さんは、そんな経験をしている最中かもしれません。どんな結果であれ、その経験が次につながる経験にできたとき、中学受験はお子さんにとって、育ちの大事な機会になったといえるでしょう。 (注記のない写真:TY / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子・東洋経済education × ICT編集部