「子どもがかわいそう」体験格差を危惧する人が見落としている、より深刻な「格差」“お金のない家”で育った女性が母親になって痛感したこと
いつも両親から言われていたことから身についた“思考の癖”
母になった今でこそ、当時の両親の苦労や努力のありがたさは身に染みて理解できますが、当時はまだ子どもだったので、「あのキラキラ光るピンクの靴が欲しい!」と割引シールのない定価の高い靴をねだったり、「なんであの玩具買ってもらえないの!」と友達が買ってもらった新しい玩具を見ては無理を言って両親を困らせたこともありました。 そんなとき両親は必ず、「よそはよそ。うちはうち」と淡々と言っていました。「お友達のお家が何を買ったかはうちとは関係ないよ」と。当時は、「なんだそれ!」と理不尽に感じることもありましたが、「よそはよそ。うちはうち」って実はとても大切な考え方。周りと比べるのではなく、あくまで自分軸で考えるという思考の癖は両親のこの言葉で育まれました。 また、自分自身のできる範囲・手の届く範囲で、身の丈に合った生活をするという基本的な感覚もこの言葉で身についたので、情報が溢れる今、SNSで大豪邸やセレブな生活を見ても「素敵だなあ~」と思ったり、「こんな生活ができるように私も頑張ろう!」と背中を押されることはあっても、それと自分の生活を比べて悲観したりすることはありません。
父との「交渉」で培ったもの
私の母は専業主婦で「お金を稼いでいるのはパパ」と幼い頃から教えられていて、お財布の紐は父が握っていたので、何か欲しいものがある時は父に頼むというのが我が家のルールでしたが……父を相手に交渉をするのは至難の業でした。 まず、「○○が欲しい」と言うと必ず理由を聞かれるのですが、「Aちゃんも持っているから」とか「みんなが楽しいって言ってるから」と周りの友達の話をすると、「そんなの全然理由になってない!」と必ず一蹴されていました。最初は「立派な理由じゃん! みんなが持ってるんだから私だって欲しいよ!」と思っていましたが、それでは絶対に認めてもらえないし、買ってもらえない。子どもながらに、「自分がそれを使ってどうしたいのか」を必死に考え続けて、自分なりに精一杯プレゼンをして本当に欲しいものは買ってもらっていました。 ただ、考え続けているうちに「あれ? そんなに欲しくないかも?」と思えることも多々あったのです。この父との交渉をする経験は、間違いなく考え抜く力とプレゼン力をつけてくれました。自分自身の本当の気持ちと向き合うことも、何度も何度も繰り返すことで自然と身についたように感じます。