【コラム】第50回「ルクレールは“無冠の帝王”で終わってしまうのか」|F1解説者ムッシュ柴田のピットイン
2022年は好スタートも、徐々に勢いを失って鈴鹿で決着
それでもグランドエフェクトカー元年の昨年2022年は、フェラーリのF1-75が高い戦闘力を発揮したこともあって、特にシーズン序盤はフェルスタッペンと激しいバトルを繰り広げ、第5戦マイアミまでは選手権をリードするほどでした。 しかし以降はフェルスタッペンの独走を許し、2位でシーズンを終了(ルクレール308点/フェルスタッペン454点)。そして今季はさらに強さを増したレッドブルとフェルスタッペンの前になすすべもなく、去年7月のオーストリアGP以来、1年半近く未勝利の状態が続いています。 ルクレールが世界チャンピオンにふさわしい才能の持ち主という評価は、間違いないでしょう。 しかし現状はフェルスタッペンに大きく水をあけられ(フェルスタッペンの184戦53勝に対し、ルクレールは124戦5勝)、背後からはジョージ・ラッセルやランド・ノリス、オスカー・ピアストリといった同世代、あるいはさらに若いライバルが迫っている状況です。
このまま“無冠の帝王”となるのか、その岐路は2024年次第!?
他のスポーツ同様、F1の世界にも“無冠の帝王”と呼ばれる人たちがいます。世界チャンピオンになれる才能を十分に持ちながら、ついに果たせなかったドライバーたち。 1950年代のスターリング・モスがその代表ですが、1980年代のジル・ヴィルヌーブ、最近ではジャン・アレジも含めていいかもしれません。 モスはフアン・マヌエル・ファンジオという強すぎるチャンピオンがいたこと、そして母国イギリスのプライベートチームにこだわりすぎたことが主な理由とされています(一度だけ生前の本人に話を聞いた際には「単に私の実力だよ」と言っていました)。 そしてジルは早すぎる死、アレジは当時どん底状態だったフェラーリにこだわらず、ウィリアムズの誘いに乗っていれば、少なくとも生涯1勝では終わっていなかったでしょう。 と、昔話に耽ってしまいましたが、本人の才能だけでは頂点を極められないのは冷徹な事実です。今や無敵のフェルスタッペンも、メルセデスが衰退し、レッドブル・ホンダが最強のパッケージを作り上げたタイミングにうまく乗れたからでした。一方ルクレールの所属する今のフェラーリは、ジャン・トッド、ロス・ブラウン時代のフェラーリではありません。 とはいえ2021年までのフェルスタッペンも大いにもがき、ミスも犯していました。チャンピオンになってから、明らかに変ぼうを遂げています。ルクレールが“無冠の帝王”の称号を返上できるかどうかは、レッドブルとライバルたちの戦闘力がより接近するはずの2024年に、より見えてくることでしょう。 文・柴田久仁夫(しばた・くにお) 1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。 ************ 【レース情報】 F1 第23戦:アブダビGP※日本時間 11月24日(金)18:30~フリー走行1回目 11月24日(金)22:00~フリー走行2回目 11月25日(土)19:30~フリー走行3回目 11月25日(土)23:00~予選 11月26日(日)22:00~決勝 F2 第13ラウンド:ヤス・マリーナ 11月24日(金)16:05~フリー走行 11月24日(金)20:00~予選 11月25日(土)21:20~レース1 11月26日(日)18:15~レース2 ************
柴田久仁夫
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