「在宅看取り」で後悔しないために 介護者が知っておくべきことを医師に聞く
「最期は自宅で過ごしたい」と病気の本人が希望する一方、ご家族としては不安になることも少なくないと思います。家族に自宅で最期まで過ごしてもらうためには、何を知っておき、どのようなことに注意して進めるといいのでしょうか。病院での看取りとどのような違いがあり、自宅で受けられる医療にはどのようなものがあるのかも気になります。在宅医療に詳しいTOWN訪問診療所城南院長の宇都宮誠先生に詳しく話を伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
自宅での看取りは特別なこと?
編集部: 日本で「自宅での看取り」は特別なことなのでしょうか? 宇都宮先生: 「自宅で最期を迎える」ということは日本ではまだまだ特別なことなのかもしれません。厚生労働省の調査では日本人の50%以上が自宅で最期を迎えたいと希望していますが、実際に希望通り自宅で最期を迎えることができたのは2020年の時点では15%程度にとどまっています。戦後、昭和の時代には80%以上と当たり前のことであった自宅での死ですが、今では病院で亡くなる方が約80%とその割合は完全に逆転してしまっています。 編集部: 病院での看取りと自宅での看取りの大きな違いは何ですか? 宇都宮先生: 死は誰にでも必ず1回訪れるものです。やはり後悔はしたくありません。適切な医療を受けた上で結果としてお亡くなりになるとしても、残された家族としては「もっとやれることがあったのではないか」「あのときにこうしておけばよかった」と後悔の念は必ず感じてしまいます。そうならないためにも、死期の近づいている患者さんがいる家族は、少しでも異変があれば入院を希望されることが多いですね。しかし、入院での看取りというのは、患者本人にとっては100%希望通りの最期とはなりません。清潔な病室も無機質に感じるかもしれませんし、丁寧なケアをおこなってくれる看護師だって所詮は他人です。感染症の拡大のリスクもあるため近年ではご家族の面会も厳しく制限されています。思いでの詰まった我が家、慣れ親しんだ布団、愛する家族に囲まれた最期とは少し違うかもしれません。 編集部: 自宅で看取るためには、何か特別な準備が必要なのでしょうか? 宇都宮先生: 最期まで自宅で過ごしたいという希望を叶えるために何か特別な準備は必要ありません。サポートしてくれる先生やケアマネジャーさん、訪問看護師など地域で探してみましょう。最も重要なのは「主治医の先生」です。普段から訪問診療をしてくださる先生をみつけましょう。ケアマネジャーさんや訪問看護師さんについては市区町村の介護保険課もしくは地域包括支援センターに相談するといいでしょう。 編集部: 家族としては何を考えておけばいいのか教えてください。 宇都宮先生: 何よりも大切なことは「患者さん本人の希望をきちんと確認すること」と「そのことを家族が共有し尊重すると心に決める覚悟」です。本人にとって自宅で最期を迎えたいと言っても、最期の時を迎えるまで様々な状況の変化があります。熱が出たり、食事が摂れなくなったり、痛みや苦痛が出るときもあるかもしれません。どのような状況が今後起こりえるのか、どのような対処が有りそれは自宅で可能なのか、どのようなときには病院へ行き、どのような状況ならじっと様子を見ていいのか。将来起こりえる変化に慌てることなく対処する冷静さと準備が必要になってきます。