1個30円のミカンが5個、1個120円のリンゴが3個、1個330円のパパイヤが2個。「加重平均」価格は?
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第11回 『ギャンブルは前回の倍額を賭ければ必ず勝てる…⁉この論理に潜む驚きの「落とし穴」に気が付きますか? 』より続く
小学生の知らない「平均」
小学生に「平均とは何ですか」と聞くと、「いくつかの数字があって、それらの合計をそれらの個数で割ったもの」という意味の答え方をする。 確かに、その答えは小学生ならば正しいだろう。ところが平均という字が付くものには、相加平均、単純平均、加重平均、相乗平均、調和平均など、いろいろある。 しかも、それらはどれも生活やビジネスで役立つ重要な概念である。本節ではそれらの基礎的な説明をしよう。 まず、冒頭で述べた小学生の答えは、「相加平均」のことである。 5人の生徒がいて、それぞれの体重は31kg、33kg、39kg、30kg、32kgであるとき、平均の体重は (31+33+39+30+32)÷5=165÷5=33(kg) となる。 この5人の平均体重を説明すると、子どもの頃の砂場遊びでしたような、凸凹をならして全体を同じ高さにするイメージをもつとよいだろう。
平均を一言で表すと
39kgと33kgの差である6kgのうち、2kgを31kgに加えて、3kgを30kgに加えて、1kgを32kgに加えると、全部の高さが同じ33kgになる。 そのように、ここで示した「相加平均」は、凸凹をならして全体を同じ高さにしている。 実は他の平均も一言で述べると、「全体をならすこと」である。 たとえば、「平均速度」というものは「同じ所要時間で、全体を同じ速度にならす」考え方である。具体的に考えると、次の図で表した区間ADがあったとする。 ある車は、AB間を時速40km、BC間を時速60km、CD間を時速30kmで走行する。その車の平均速度はどのように考えればよいだろうか。 それは、AD間の合計走行時間は図の状況と同じで、かつAD間を同一速度(同じ速さ)にならして走行したとしての速さのことである。