【もうすぐなくなる日本の名建築】佐藤武夫〈岡山市民会館〉
こうした動きに対して、建物が壊されることを惜しむ声も挙がった。2021年度、ドコモモ・ジャパンは「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」のリストに、〈岡山市民会館〉を追加選定した。日本建築学会中国支部は、2022年6月に〈岡山市民会館〉の保存要望書を市に提出した。また、日本建築家協会中国支部岡山地域会は、シンポジウム『建築の再生活用を市民と考える』を〈岡山市民会館〉で2023年2月に開催し、再生活用の方策を探った。 しかし建物を解体する方針は覆ることはなかった。〈岡山市民会館〉と〈岡山市立市民文化ホール〉は、ともに2024年3月に閉館する。それまでの1年間をかけて、〈岡山市民会館〉では、『見納め見学会』『あの日の思い出展』『ファイナルコンサート』など、さまざまな閉館記念事業を行なっている。そうした中で、新しい芸術文化施設〈岡山芸術創造劇場ハレノワ〉も、2023年9月にオープンを果たした。
市が公表している整備方針によれば、〈岡山市民会館〉の跡地は、憩いや賑わいの場となるオープンスペース(公園)に変わる。〈岡山市民会館〉のメモリアルを設置することも検討するという。 日本では1960年代になって全国各地で文化会館が建てられた。その設計を多く担ったのが佐藤武夫であり、〈岡山市民会館〉はこの時代の文化会館建築の典型といえる。その一方で〈岡山市民会館〉は、都市の歴史的な文脈を意識しながら、必要とされる機能を限られた敷地の中で実現した、ここにしかない優れた建築だった。解体されるまでの短い期間のうちに、目に焼き付けておきたい。
〈岡山市民会館〉
岡山県岡山市北区丸の内2-1-1。TEL 086 223 2165。2024年3月の閉館まで、コンサートなど様々なイベントを開催予定。2024年3月23日、24日の2日間にかけて、閉館前の最後のイベントとなる『Last Song for 岡山市民会館』も開催する。施設の見学などの詳細は、電話にて問い合わせを。
photo_Keisuke Fukamizu text_Tatsuo Iso