再審法改正を阻む「検察の無謬性神話」 とは…稲田朋美議員に聞く 「法改正の実現につなげたい」と意欲
袴田巌さんの再審判決が9月末にようやく言い渡される。袴田さんの場合、再審の申し立てから実に40年以上が経過しており、現行の制度が冤罪被害者の早期救済につながっていないとの声が高まる中、再審法改正への動きが生まれている。 6月17日には、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(柴山昌彦会長)が小泉龍司法相に要望書を提出。議連のメンバーで弁護士出身の稲田朋美・衆院議員(自民党)に再審法の課題について話を聞いた。(ライター・梶原麻衣子)
●「再審請求がこれほど困難なものとは」
――「袴田事件」などの冤罪事件を契機に、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が3月11日に結成されました。 稲田:自民党からは165名、全体では324名の議員が参加しています。 昨年(2023年)3月に東京高裁が袴田事件の再審開始、つまり裁判のやり直しを決定し、10月から再審公判が開かれています。袴田さんが死刑判決を受けたのは実に44年も前のこと。事件発生自体も57年前にさかのぼります。 4人が殺害された「袴田事件」で死刑を求刑された袴田巌さんは、判決確定の翌年に第一次再審請求を行い、ようやく2014年に静岡地裁が第二次再審請求を認め、「袴田さんに対する拘置をこれ以上継続することは、耐えがたいほど正義に反する」として袴田さんを釈放しました。 しかしこれを不服とする検察が抗告し、東京高裁は再審開始決定を取消。今度は弁護人が最高裁に特別抗告し、最高裁は高裁決定を取り消して、高裁に差し戻し、昨年ようやく東京高裁が再審を認め、静岡地裁で再審公判が開始されたという経緯です。 私は、再審開始に40年以上もかかるってどういうことなのか、しかも裁判所が「捜査機関による証拠捏造」を指摘していることはただ事ではないと、再審法自体に疑問をもって再審について調べだしたのが、再審法改正に携わるきっかけです。 もちろん私も弁護士として、冤罪事件が存在することは知っていました。しかし再審開始がこれほど困難なものだとは、とあらためて問題意識を持ったのです。