再審法改正を阻む「検察の無謬性神話」 とは…稲田朋美議員に聞く 「法改正の実現につなげたい」と意欲
●「なんとか法改正の実現につなげたい」
――「袴田事件」を契機に、再審に対する世論の見方も変わってきています。 稲田:これまでにも再審に対する世間の関心が高まった時期はありました。特に1980年代には、先にも述べた白鳥判決の影響で再審が開始され、死刑判決が無罪となった事例が4件、続けて起きています(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)。当時も議論が盛り上がったようなのですが、改正に至らずにしぼんでしまい、40年近い月日が経ってしまいました。 今回は警察による証拠の捏造が疑われる袴田事件が広く報じられることで、再審請求や冤罪に対する国民の意識も高まっていますから、なんとか法改正の実現につなげたいと思います。 ――刑事事件は一般の国民にとっては「自分は悪いことをしないから関係ない話」としてしまいがちですが、冤罪事件となると他人事だと言っていられない面もあります。 稲田:全くその通りで、例えば、起訴が取り消されて、国賠訴訟が行われている大川原化工機の冤罪事件。取り調べを受ける側はメモを取ることも許されない一方、警察の調書の文言は警察に有利な形で書かれてしまい、逮捕・起訴されるに至りました。社員の一人は一年間も拘留され、体調が悪化しているにもかかわらず保釈請求も認められず、結果としてお亡くなりになっています。 起訴を認めた検察官は、警察の恣意的な捜査が明らかになっても「起訴は間違っていなかった」と主張していますが、これも検察の無謬性から来るものではないでしょうか。 あるいは、袴田事件の支援者の一人でもある周防正行監督が制作した『それでもボクはやっていない』という映画のように、痴漢冤罪で有罪とされてしまうケースなどは、多くの人にとって決して他人事ではないはずです。
●「弁護士出身の政治家として、再審法改正に取り組んでいきたい」
――だからこそ、再審法改正を目指す超党派議連には、右から左まで多くの国会議員が参加しているのですね。 稲田:刑事法の大原則は白鳥事件の判例の通り、「手続保障」と「疑わしきは被告人の利益に」です。この再審法改正には政治思想の右左を問わず、多くの人の賛同を得られるのではないでしょうか。 弁護士出身の政治家として、再審法改正に取り組んでいきたい。その思いの根底にあるのは、無実の罪で長年苦しい立場に追い込まれる人を救いたいという気持ちです。冤罪で人生が葬り去られることを見て見ぬふりはできません。人が人として大切にされる政治を目指したいと思います。