「電話がかかってくるのが怖い」→カウンセラーの教える克服法が参考になる
組織は上下関係があるので、こうした力関係を理解せずに、上の者が下の者にボールを投げると、うまくキャッチができません。上の階の人が「そんなボールを投げてどうするんだ!」とか「なぜ、これが受け取れないんだ」と怒ったら、それはハラスメントにもなります。 平らな場所でキャッチボールをするように、上司は部下が受け取りやすい、優しい言い回しが必要です。 ● 電話トークが難しいのは当たり前 自分の恐怖心を否定しなくていい 電話に対してどうしても恐怖心をぬぐえない場合、どうしたらいいかについてふれておきます。 電話がかかってくるとこわいとか、電話で話すのがいやだという感情を否定すると、逆にその感情が高まってしまうことがよくあります。 自然にわき上がってきた恐怖や嫌悪感を、「こんなことを考えてはいけない」とか、「こんな私じゃダメだ」と抑圧すると、その感情があることを自分で認識できなくなり、自分自身の気持ちが正確につかめなくなってきます。 だから感情にふたをしないで、自分自身に向き合う必要があります。 恐怖を抑圧すると起こるもうひとつの可能性は、抑圧した感情そのものが強化されるということです。 「こんなことを考えてはいけない」「こわいと思ってはいけない」と思っていると、無意識下でその感情に執着してしまうので、感情が強化され、そこから抜け出せなくなってしまうのです。
● 「シロクマ実験」が教える心理 否定するほど逆に意識してしまう 心理学に「シロクマ実験」という有名な実験があります。シロクマの映像を見せて、Aグループには「シロクマを覚えておいてください」、Bグループには「シロクマのことを考えても考えなくてもかまいません」、Cグループには「シロクマのことをぜったいに考えないでください」とお願いしたところ、シロクマの映像を一番覚えていたのは、「ぜったいに考えるな」と言われたCグループだったのです。 つまり否定すればするほど、否定したものが自分の中で強化されてしまうわけです。「電話がこわい」という感情も、「こわいと思ってはぜったいダメだ」と否定すると、ますます強化されて、こわさが増す可能性があります。 ですから否定しないこと。むしろこわいと思ったほうがいいでしょう。 無理にその気持ちを消したいとか、克服しようと思わずに、「ああ、今、私はこわいと思ったんだ」と抑えつけずにそのまま感じて受け止めるのです。 そして私の場合は、「ああ、こわかった。すごくいや。あの人、むかつく」などその気持ちをそのまま感じつづけます。ずっと感じていると、とても気分が悪く、むしゃくしゃしますが、経験的にそのほうが早く気持ちに折り合いがつけられます。「ま、いいか」と思えるようになるのです。
大野萌子