昔の写真を見て思い出に浸る ノスタルジアの意外な効果 明日への原動力を生み 仕事に意欲、離職防止も
会議の写真や動画、ノスタルジア喚起のきっかけに
多角的に意義のあるノスタルジアですが、私たちが普通に働く中で、どうすればノスタルジアを喚起できるのでしょうか。重要になるのは、「きっかけ」づくりです。ノスタルジアを喚起するきっかけを意識的に準備することが大切です。 有力なきっかけとなるのは、写真や動画などのメディアです。プライベートではよく写真を撮る人でも、仕事中はほとんど写真を撮らないのではないでしょうか。もちろん、機密情報を扱う場面や、そもそもカメラの持ち込み自体が禁止されるエリアもあるでしょう。 しかし、昼食をとるとき、何気ない打ち合わせの様子、執務スペースで仲の良い同僚と談笑するときなど、その様子を記録することができるタイミングはきっとあるはずです。今はスマートフォンの性能も向上し、高画質な記録を簡単に収めることができます。 写真や動画を撮っておけば、それらをもとに過去を振り返ることができます。かつての同僚と集まった際に一緒に見返すのも良いですし、仕事が落ち着いた一人の瞬間に見返すのも良いでしょう。きっと懐かしさが胸いっぱいにあふれてくるはずです。 ノスタルジアの効果を知ると、過去の良い思い出を意識的に振り返ることの大切さがわかります。日々の忙しさに追われがちな現代社会において、時には立ち止まって過去を振り返る時間を持つことは、むしろ前に進むための力になるのです。 私たちは人生の多くの時間を仕事に費やします。そこには喜怒哀楽の様々な経験が伴います。そうした経験を思い返すきっかけがあれば、ノスタルジアは容易に引き起こすことができます。 ノスタルジアの力を借りて、過去と現在、そして未来をつなげていく。そうすることで、より豊かで意味のある人生を歩んでいけるのではないでしょうか。ふと立ち止まって懐かしい思い出に浸る時間を持つことを、ぜひ心がけてみてください。きっと、新たな視点と活力を得ることができるでしょう。
(※1) Sedikides, C., Wildschut, T., Arndt, J., and Routledge, C. (2008). Nostalgia: Past, present, and future. Current Directions in Psychological Science, 17(5), 304-307. (※2) Sedikides, C., and Wildschut, T. (2018). Finding meaning in nostalgia. Review of General Psychology, 22(1), 48-61. (※3) Sedikides, C., and Wildschut, T. (2016). Past forward: Nostalgia as a motivational force. Trends in Cognitive Sciences, 20(5), 319-321. (※4) Leunissen, J. M., Sedikides, C., Wildschut, T., and Cohen, T. R. (2018). Organizational nostalgia lowers turnover intentions by increasing work meaning: The moderating role of burnout. Journal of Occupational Health Psychology, 23(1), 44-57.
ビジネスリサーチラボ代表 伊達洋駆