昔の写真を見て思い出に浸る ノスタルジアの意外な効果 明日への原動力を生み 仕事に意欲、離職防止も
過去の良い記憶を未来に向けたエネルギーに変換
ノスタルジアは過去を思い返すことですが、興味深いことに、未来への活力をもたらすことがわかっています。「Past forward(過去を未来につなげる)」というタイトルの論文が発表されており、ノスタルジアが未来に向けた原動力となることが実証されています(※3) 。 実験でノスタルジアを喚起した結果、新しいことに対する興味が高まることがわかりました。既存の枠組みにとらわれない発想が出やすくなるのです。これは、ノスタルジアが現在の自分に対する肯定感を高め、未来への意欲や希望を促し、開放的で柔軟な姿勢を育むからだと考えられています。 要するに、ノスタルジアは過去にとどまる感情ではないのです。過去の良い記憶を、未来に向けたエネルギーに変換する力があります。言い換えれば、思い出を一種の資源として活用できるということです。 ところで、過去を振り返ると聞くと、学習と結びつけて考える人もいるかもしれません。確かに、振り返りによって学びを得ることは大切です。しかし、ノスタルジアは、振り返りが学習だけでなく、エネルギーマネジメントにおいても有効なアプローチであることを示しています。
組織の中のノスタルジア、仕事の意味見いだしやすく
ここまでの話を読んで、ノスタルジアの効果には納得できたとしても、仕事とは縁遠いものだと感じた人もいるのではないでしょうか。しかし、「組織ノスタルジア」という考え方もあります。これは、その組織の中での経験を懐かしく思い出すことを意味します。 実験において、組織ノスタルジアを想起させると、自分の仕事に意味を見いだしやすくなり、その結果、離職したいという気持ちが弱まることがわかりました(※4) 。特に興味深いのは、情緒的に消耗している人ほど、この効果が顕著に表れることです。 組織における良い記憶をたどることが、ウェルビーイングや従業員の定着をもたらすという発見は、実践的にも有用です。忙しい日々の中で、時には昔の話をするのも良いということです。