昔の写真を見て思い出に浸る ノスタルジアの意外な効果 明日への原動力を生み 仕事に意欲、離職防止も
私たちは、忙しい日々を送る中で、ややもすると前を向くことばかりに集中しがちです。しかし、時には立ち止まって過去を振り返ることの大切さを、最近の研究が明らかにしています。 特に「ノスタルジア」と呼ばれる感情が、私たちのウェルビーイングに影響を与えることがわかってきました。本コラムでは、ノスタルジアの意味や効果、そして職場でどのように活用できるかについて、研究知見をもとに見ていきます。 懐かしさを感じることが未来への原動力になるという意外な事実に、きっと驚かれることでしょう。
ウェルビーイングにつながるノスタルジア
ノスタルジアとは、過去の思い出を懐かしむことです。ノスタルジアという言葉を聞くと、後ろ向きなイメージを持つ人もいるかもしれません。また、ノスタルジアが私たちのウェルビーイングとどのような関係があるのかと、疑問に思う人もいるでしょう。 確かに長い間、ノスタルジアはネガティブな感情として捉えられてきました。例えば、気圧の変化や牛の鈴の音がノスタルジアを引き起こすという考えや、過去に戻りたいという不健全な欲求の表れだと解釈されることもありました(※1) 。 しかし、近年の研究はこうした通説を覆し始めています。ノスタルジアが実際にはウェルビーイングにつながることが実証されているのです。具体的には、実験でノスタルジアを喚起すると、人生に意味を感じやすくなることがわかりました(※2) 。 人生に意味を感じられるようになると、さらに良い効果が生まれます。自分にとって大切な目標がはっきりと見えてくるのです。そして、その目標の達成に向けて頑張ろうという意欲も湧いてきます。ノスタルジアは目標達成のための活力を生み出す源となります。
自己の連続性や社会的なつながりを実感
ノスタルジアがこのように有効なのには、主に2つの理由があります。1つ目は、自己の連続性を感じられるからです。ノスタルジアは過去の大切な思い出を私たちに再認識させます。そうすることで、過去の自分と現在の自分がしっかりとつながっているという感覚が強まります。その結果、自己肯定感が高まります。 2つ目の理由は、社会的なつながりを感じられるからです。ノスタルジアは、親しい人々との絆を思い出させてくれます。自分を助けてくれる人、大事にしてくれる人、頼りになる人の存在を改めて認識することができます。孤独感が軽くなり、前向きな気持ちになれるのです。