「ボールは友達」リアル翼くんだったからこそ本気で説く「監督は何より選手に楽しんでもらわないといけない」【中村憲剛×風間八宏対談 前編】
風間流「システム11」という考え方
風間 攻撃と守備は分けないし、休んでいる選手は誰もいない。何かあれば指導者がそこで修正してやればいいだけのこと。ただ、周りからサボっているように思われたら困るんで、俺、練習メニューはいろいろと変えてはいるんだけど(笑)。 中村 風間さんらしい。フロンターレのとき、1時間であってもかなり疲れるんですよね。1本のパススピ-ドが上がると、結局(守備の)寄せるスピードも上げなきゃいけないので。技術も判断もスピードが上がれば上がるほど、攻撃も守備も連続でより負荷が掛かっていくんですよね。 風間 そう。攻撃も守備も一緒だから。 中村 あと、「サッカーはシステムじゃない」ともよく言っていました。選手からすれば、いや攻守に分かれるでしょ、システムでしょっていうのはちょっとありましたけどね(笑)。 風間 「システム11」だから。 中村 出た! 最近、風間さんからまた新しい言葉って出てるなって思いましたもん。 風間 つまり、ボールを持っている選手と自分の間には一切、敵も味方も人を入れないようにするんです。線を引くって言ってるんだけど、そのためにGKも含めた全員が動くわけだから「システム11」。ほかになにか決まりがあるとすれば戻る位置だけ。 中村 守備のときの、ですね。 風間 そう。ただ俺は、戻る位置のことをシステムとして指していないから、「システムは11なんだ」と。 中村 風間さんの話を聞くと、何だか分かったような気にはなるんですよ。でも多分、本当のことは理解できていないんだろうなとも感じます。僕が思っていることと、風間さんが思っていることは実はちょっと違っている感じがします。 風間 違わないよ(笑)。 中村 風間さんの練習は、やらされる感覚がないんですよね。ずっと一緒にやっていると、今日はこういう練習をやるんだなって大体読めるんですけど、自分を伸ばすための練習だから「よし、今日は絶対にノーミスでやろう」とか思えるんですよね。たらればですけど、20代前半で風間さんに出会っていたら……。 風間 (大久保)嘉人がフロンターレに来たとき、憲剛が「自分のことだけでいいから。チームを背負わなくていいから」って言っているのが聞こえてきて、俺が言う前にそれを伝えるのかと思ったことがあったよ(笑)。でも、憲剛はいい監督になると思ったな。そのときも確か「憲剛、将来は監督になれよ」って言ったんだよな。 中村 覚えてます。風間さんから学んだというより、結局いろいろと自分の考えを書き換えられた感覚なんですよね。僕の指導者としてのベースはそこにあります。風間さんみたいにはなれないから、ちょっと違う形にはなると思うんですけど、自分の道を進んでいければいいかなと思っています。
中村憲剛さんの最新刊、絶賛発売中!
新刊『中村憲剛の「こころ」の話 今日より明日を生きやすくする処方箋』(著:中村憲剛/監修:木村謙介)が絶賛発売中。 今作はサッカーの技術や戦術の話ではなく「こころ」の話。川崎フロンターレのチームドクターも兼務する内科医師、木村謙介先生が全面監修し、トップアスリートの思考法やメンタルチューニング術を、スポーツだけでなく家庭や職場など日々の生活に応用できるような形で、わかりやすく伝える人生の“処方箋”。 取材・構成/二宮寿朗 撮影/熊谷貫 ※「よみタイ」2024年6月8日配信記事
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