長閑な風景より都会的なクールさが似合う フルモデルチェンジしたミニ・カントリーマンに試乗 ミニ史上最大のミニ!
カントリーよりシティが似合う?
見るからにモダンになった新しいミニ・カントリーマンの上位モデルのJCW(ジョン・クーパー・ワークス)とS ALL4の2台を連ねて春の嵐を避けながら田舎道を駆け回ってきた。 【写真8枚】まんまる有機ELディスプレイがポイント 遊び心満載のミニ・カントリーマンの写真を見る ◆クロスオーバーよりカントリーマンの方が合ってる カクカクのライト、前後ドアを走るL字のライン、Cピラーの5角形の装飾パネル。どれもミニの歴史になかったものだ。切り立ったウインドウや高く水平な屋根、四角いグラスエリアという2ボックスのシルエットはたしかにミニのそれだけど、黄色い絨毯を敷き詰めたような長閑なたんぽぽの群生地では、なんだか居心地が悪そうな感じである。 その名はミニ・カントリーマン。BMW傘下で産まれたミニの5ドアSUVバージョンの3代目である。初代と2代目は登録商標の関係で日本ではクロスオーバーを名乗っていた。これまでも正円でないヘッドライトなど、ややワイルドでロバストな雰囲気を醸しつつ、ミニ的な憎めない愛らしさは残していて、クロスオーバーよりカントリーマンの方が合ってるなぁ、と常々思っていたから、この名称変更は歓迎したい。 とはいえ見た目はちょっと都会的すぎではないか。グレーと赤の上位モデルのJCWも、緑と白のSも、白い綿毛の飛ぶ公園はなんだか落ち着かないみたいだ。今の装いではミニ・シティマンという感じである。 カントリーマンの元ネタはBMC傘下、オースティン・ブランドのミニのロングホイールベース版だ。車体後ろ半分に木枠を付けた、なんともクラシカルな仕立てだった。公式ウェブサイトのコンフィギュレーターによれば、3代目カントリーマンにも、グリルの縁取りが黒くなるなど、ぐっとシックになるクラシカルなパッケージも用意されている。たんぽぽも似合うかもしれない。 こんな大きいんじゃミニじゃない、と思う人もいるだろう。とはいえ、BMW傘下になってからのミニを選ぶひとは、多くがこだわりも欲望もミニマムでなくマキシマム。5ドアで大きく背も高く4WDも選べる初代も2代目も、ここ日本では受け入れられ、ファミリーカーとしてミニの販売の中核を担ってきた。ミニからミニへの乗り換えとなれば、必ず候補に挙がるミニなのである。 3代目カントリーマンはミニの歴史上、最大のミニだ。ただし、その分荷室も後席も相応に広くなるなど、市場の要求にきっちり応えている。それにサイズは大柄だけど、元々のミニのシルエットは代々踏襲。そのおかげで、着座位置が高く、視界も良く、車両感覚も掴みやすい実用車であり続けているという意味では、ほかのミニよりカントリーマンはむしろオリジナル・ミニ的なのかもしれない。 ◆テクノロジーとアイデアで 内装は外装以上に目新しさ満載。編み込みのリサイクル素材を用いたダッシュパネルに浮かぶ丸型液晶に操作系を集約させつつ、左右どっちにひねっても始動と停止ができる縦型のつまみ型スイッチやシフト・セレクターなどの機械式ボタンを、最低限に絞り残している。シンプルさと使い勝手のバランスがいい。 ステアリングのスポークは左右の2本に加え、下部に布地のベルトを渡している。ポップだがけっして安っぽくはない。こうしたテクノロジーとアイデアで余計なモノを極力そぎ落とし、室内空間の広がりを感じさせるあたりも、オリジナル・ミニにちょっと通ずるものがある。 この日はたんぽぽと一緒だった数時間を除いて長く春の嵐に見舞われ、峠道を走る機会には恵まれず、僕はミニ・カントリーマンで延々と田舎道を走った。同じ道のりをJCWとSに代わる代わる乗ったけれど、いずれも初代や2代目同様、車体はとにかくがっちりどっしりしていて硬質な印象。足さばきも洗練されてはいるが基本的には似ている。高架道路の金属の継手など路面からの入力はそこそこ拾うが、突っ張る感じはせず、強固なボディのおかげもあってさっと収束する。JCWに標準の電子制御式ダンパーと20インチの組み合わせも予想よりずっと快適だったが、総じて日本のカントリーロードや高速では機械式と18インチのSの方がややあたりが柔らかで、より綺麗に粘る感じだった。 新しいカントリーマンは長閑な風景より都会的なクールさが似合う見た目だけれど、中身や仕立ては実用的でなかなかにオールマイティで、乗るひとびとがみんな笑顔になる親しみの持てるミニだと、僕は思う。 文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人 (ENGINE2024年7月号)
ENGINE編集部
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