ニッポン企業の生きる道 パナソニック復活への道筋【WBSクロス】
楠見社長が打ち出す「グリーンインパクト」
楠見社長が打ち出した戦略が「グリーンインパクト」。グループ全体で環境関連事業に力を入れると宣言したのです。幸之助氏が唱えた人々の生活を豊かにする物心一如とも繋がるといいます。 「このまま温暖化や資源の枯渇が進んだら、それ(事業)どころではなくなる。環境という領域をちゃんとやっていく」(楠見社長) 力を入れる環境事業では意外なものにも取り組んでいました。大阪府の農林水産関係の研究機関「大阪府立環境農林水産総合研究所」。ビニールハウスに入ると目に飛び込んできたのは、いちごです。どこにパナソニックの技術が? 「パナソニックが開発した『ノビテク』を散布して、どんな効果があるのかを見る」(大阪府立環境農林水産総合研究所の山崎基嘉主任研究員) パナソニックが開発した農作物の成長刺激剤「ノビテク」を葉っぱに吹きかけるだけで、収穫できたいちごの数が4割も増えたといいます。そのノビテクを開発するパナソニックの研究棟に初めてカメラが入りました。
「緑色の点々がシアノバクテリアです。光合成をする微生物で、いわゆる藻です」(パナソニックHDの児島征司主幹研究員) この微生物がCO2を吸い、光合成をするときに出す物質に植物の成長を刺激する成分が含まれることを突き止めたのです。CO2を削減しながら、農作物の収穫量を増やすノビテク。今年度中に商品化し、海外にも売り込む予定です。 「世界規模の持続可能な食料生産。CO2の活用。その両立が最終的な姿になる」(児島主幹研究員)
世界を狙う技術はここにも。モデルハウスのベランダに取り付けられていたのは、薄くて折り曲げられる次世代のペロブスカイト太陽電池です。 日本や中国などが開発競争を繰り広げています。パナソニックは、ディスプレイの製造技術を応用し、世界初、窓ガラスや建材と一体化した製品を開発。これで屋根だけでなく、建物の窓や壁でも発電できるようになります。 「都市化が激しくなっているアジアから攻めたい。世界に広げることで市場をとっていく」(パナソニックHDの金子幸広さん) その電池の分野でパナソニックが社を挙げて強化しているのが電気自動車向けのバッテリー。アメリカのテスラと協業する一方で、中国から材料を調達するなど、米中両国をまたいで事業を展開しています。 「米中対立の地政学リスクをどう考えるか」(豊島キャスター) 「電池の材料の一部が中国への依存度が高いところは、北米大陸内のサプライチェーンも合わせて確立していく動きをとっている」(楠見社長) 「中国経済のリスクは」(豊島キャスター) 「私たちは中国で事業を始めてからかなりの軸足を中国に置いている。中国で戦える力をつけてきた。中国からは逃げないし、中国で戦えないようでは、日本でもグローバルでも戦えなそういう意味では中国で戦う力をどんどんグローバルに広げる」(楠見社長) さらに本業の家電でも新しい取り組みを始めています。賃貸住宅での家電のサブスクサービスです。イケアと組んで家具付きプランも用意。家電や家具を持たずに入居し、捨てずに退去できる暮らしを提案します。 「家電の利用者に購入以外のもう一つの選択肢を作った。環境負荷の抑制にも繋げていける」(パナソニック くらしアプライアンス社の太田雄策さん) こうした取り組みもあり、2024年3月期の純利益は4600億円と過去最高の見込み。失われた30年の先が見えてきたのでしょうか。 「パナソニック復活は見えているか」(豊島キャスター) 「筋道が見えているが、そのスピードをいかに上げるかが課題。まだまだスピードを上げられる」(楠見社長) 「ソニーや日立のスピードに追いつくか」(豊島キャスター) 「それを抜いていきたい」(楠見社長)