「ドレイクの方程式」の修正案が提出される 私たち人類は “ひとりぼっち” なのか?
■知性の獲得は「プレートテクトニクス」がカギ?
今回の研究で注目されたのは、ドレイクの方程式の項目の1つである「fi(生命が知性を獲得する割合)」の推定値に対する疑問です。1961年にドレイクらはfiの値を1であると設定しました。つまり、生命は100%の確率で知性を獲得する進化を遂げるということになります(※4)。この値は、最初にドレイクの方程式が発表された会議に参加したメンバーの1人である脳科学者のジョン・C・リリーの提案によるものだとされています。リリーはイルカの高度な知性に注目し、イルカとヒトという異なる生命が独自に知性を獲得した地球という実例がある以上、fiの値はかなり高いと考えて1と設定しました。 ※4…ドレイクらが設定した値はfi=0.01(1%)だとする資料もあります。本記事では、論文とプレスリリースで言及された値を採用しています。 後の時代における他の科学者によるfiの推定値は、多くの場合0.01~1とされていました。つまり、100%は言い過ぎにしても、生命は最も低い可能性でも1%の確率で知性を獲得すると考えられてきたことになります。 しかし、ドレイクの方程式が提唱されてから半世紀以上経った現在、地球の驚くほど厳しい環境でも生息している生命の発見や、居住可能な惑星の候補が多数あることを踏まえて、生命の存在そのものはそこまで珍しくないのではないかと考えられています。そうなると、宇宙がそれほどまでに生命に満ち溢れているのならば、なぜ他の文明に出会わないのか、というフェルミのパラドックスが指摘する事態に陥ります。 そこでStern氏とGerya氏は、生命の誕生そのものは珍しくなくとも、生命が進化して知性を獲得することには何らかの制約があるのではないかと考え、その原因を推定しました。両氏が注目したのは「プレートテクトニクス」です。地球の表面を構成する地殻は何枚ものプレートに分かれています。プレートはゆっくりと移動しながらマントルへと沈み込み、マントルから湧き上がった物質で新たに生成される大循環を繰り返しています。これがプレートテクトニクスです。 実は、岩石が主体の天体で現役で活動しているプレートテクトニクスは、今のところ地球でだけ見つかっている珍しい現象です。同じ岩石天体では、金星、火星、木星の衛星イオでは火山活動がある(またはあった)ものの、プレートテクトニクスははるか昔に停止したと考えられています。また、水星や月では活発な地質活動の痕跡そのものが見つかっていません。