セミナー講師は多くのことを伝えようとしてはいけない(滝川徹 時短コンサルタント)
■たった一つでも気づきを与えられたら十分
私が好きな本の一つに『イシューからはじめよ』(英治出版)があります。外資系コンサルティング会社のマッキンゼー出身の安宅和人さんが、価値ある仕事を生み出すための手法について書いた本です。 この本を読んだ時、「イシューからはじめる」という考え方に衝撃を受けました。仕事にかけられる時間は限られている。その中で価値ある仕事を効率的に生み出すためには解くべき問題=イシューを見極めることが大切だと安宅さんは言います。簡単に言うと、あれもこれもと手をつけるのではなく、本当に解くべき問題を見極め絞り込む。そうするとやることは100分の1になるというのです。 言われてみれば当たり前ですが、この本を読むまで私には「解くべき問題を絞り込む」という発想はありませんでした。私は良いセミナーも同じだと思うのです。極端に言えば、セミナーを受けた後に受講者がシンプルな一つの気づき・メッセージを得ている。もしくは新しい発想・視点を手に入れている。少なくとも私はこれをセミナーのゴールと考えています。 安宅さんの本も「イシューからはじめよ」という一言・シンプルなメッセージを伝えるために10万字近い文章を書いているわけです。セミナーも同じです。伝えたいシンプルな一つのメッセージがある。 それを伝えるためにたとえば2時間、さまざまな例を使って説明をするのです。セミナー終了後に受講生の頭に残ってほしいメッセージは何か? これを意識してセミ ナーの構成を考えましょう。それが実は受講者の満足度を高めるコツなのです。
【プロフィール 滝川徹・時短コンサルタント】
1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。