EU離脱再延期、イギリスは「6か月」で答えを出せるのか?
5月辞任説もささやかれるメイ首相
10月31日までの期限延長を勝ち取ったメイ首相だが、一方で、自身が6か月以内に進退問題に直面することはほぼ不可避な状態に追い込まれている。来月2日にはイングランドと北アイルランドで地方選挙が実施されるが、EU離脱をめぐるこれまでのやりとりで与党保守党のイメージは低下。イングランドでは270の自治体で、北アイルランドでも11の自治体で選挙が行われるが、すでに保守党の大敗を予測する声がメディアや研究者から上がっている。敗北の度合いによってはメイ首相の責任問題に発展しかねない。 5月23日には前述の通り、欧州議会選挙が実施される。10日に行われたEU首脳会議で、イギリスは条件付きで離脱期限の延長を認められたが、5月22日までにEU離脱協定を批准できなかった場合には、23日から始まる欧州議会選挙へ参加しなければならない。欧州議会におけるイギリスの議席数は73。5年前に行われた欧州議会選挙では、イギリスのEUからの離脱を声高に訴えたイギリス独立党(UKIP)が24議席を獲得して第1党に躍進した一方で、キャメロン首相(当時)が率いる保守党は7議席を減らして惨敗した。「欧州議会選挙に参加することは事実上のEU残留スタート」と警戒する議員や有権者は少なくない。 加えて、さらに欧州議会選挙でも保守党が大敗を喫した場合、矛先がメイ首相に向けられるのは明らかだ。選挙結果を受けて、メイ首相が自ら辞任する可能性もあるが、英議会における内閣不信任決議案の存在も大きな脅威となっている。 英メディアはすでに「ポスト・メイ」として、マイケル・ゴーヴ環境大臣、ジェレミー・ハント外務大臣、ボリス・ジョンソン前外務大臣らを有力な後任候補者として報じている。仮にメイ首相が早期の辞任を発表したとしても、後任者がEUと英議会の両方でさまざまな協議を上手くまとめられるという保証はない。ハロウィンの日でもある10月31日に、イギリスが欧州でどのような立ち位置にいるのかは現時点では不明だが、残された選択肢は時間の経過とともに減っていく。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う