EU離脱再延期、イギリスは「6か月」で答えを出せるのか?
イギリスのEU離脱期限の延長をめぐって協議したEU加盟国の首脳は11日、2度目となる離脱期限の延長を認め、新たなデッドラインを最長で10月31日に設定することで合意した。イギリス国内でEUからの離脱を問う国民投票が実施されたのは2016年6月。当初は2019年3月29日が離脱の期限として定められていたが、イギリスでは議会内で政治的な結論が見いだせない状態が現在も続いている。トゥスクEU大統領は11日未明に行った記者会見で、イギリスに対し「時間を無駄にしてほしくはない」と発言。オランダのルッテ首相も同日、「これが最後の延期だ」とコメントしてイギリスを牽制した。離脱期限が6か月延長されたものの、イギリスが期限内にどのような回答を出すのかは不透明だ。 【図表】混迷する英国のEU離脱問題、そもそもこれまでの経緯は?
株下げた? 延長案に猛反対したフランス
イギリスのEU離脱に対して、6か月の期限延長で加盟国が合意に至った10日のEU首脳会議だが、加盟国の首脳らによる話し合いは6時間を超えた。期限延長が認められた時、日付はすでに11日に変わっていた。ドイツのメルケル首相に同行してベルギーで取材を行っていたドイツ人記者は、「本当に長い一日だった。ただ、イギリスがこれからの6か月で回答を見出せるのかは分からない」と筆者に語った。
離脱期限延長をめぐる臨時首脳会議がここまで長引いた原因とされるのが、フランスのマクロン大統領が長期の延長に強く反対し、他の加盟国首脳らが落とし所を見出す必要に迫られたからだと複数のメディアは伝えている。英紙ガーディアンは11日、EU加盟国首脳の過半数が支持していた「最長1年」の期限延長にマクロン大統領が異議を唱え、多くの首脳を「苛立たせた」と伝えている。マクロン大統領は期限延長の長期化はEUの結束力を脆弱化させるリスクだと主張。フランス政府高官もガーディアン紙に、「イギリスの国内問題をこれ以上EUに持ち込んでほしくない」とコメントしている。 マクロン大統領が示したイギリスに対する厳しい姿勢を、英紙テレグラフは「1960年代のド・ゴール大統領を意識した寸劇だったが、泣き言で終了した」と皮肉を込めて伝えた。EUの前身となる欧州経済共同体(EEC、1958年発足)は、当時のフランス大統領であったド・ゴール氏がイギリスの加盟に強く反対したため、イギリスがEECに加盟したのはド・ゴール氏の死去後となる1973年であった。マクロン大統領はド・ゴール氏のように「欧州の結束」を呼びかけるパフォーマンスを行ったが、イギリスの排除のようにも聞こえる主張に賛同する首脳はおらず、最終的にフランスに恥をかかせない形で6か月の期限延長で落ち着いた。しかし、臨時首脳会議でのマクロン大統領の主張がEUを混乱させるパフォーマンスだと批判する声も少なくなく、フランスが株を大きく下げたという見方は否めない。