ヘタフェ移籍の久保建英が語った”揺れる東京五輪”への思い…「今の状況で出たいと言うつもりはない」
そして、ビジャレアルで出場機会を得られない立ち位置を認め、自らの意思で加入から5ヵ月で退団。必要としてくれた新天地ヘタフェに加入してからの時間を、久保はポジティブに受け止めている。 「あまり時間がたっていなくて、まだいろいろなところを知ることができていないんですけど、自分が見てきたところでは本当に成長できそうな環境なのかなと思っています。言い方は変ですけど、このチームは本当に愉快な仲間たちというか明るい選手たちが多くて、チーム全体もとても明るい印象があるので、新加入選手にとっては非常にいい環境なのかなと感じています」 インタビューでは性格についても質問が飛んだ。これまでに何度も見せてきた、まだ十代という若さに似つかわしくない、脳裏に浮かんだ思いを当意即妙に自分の言葉へ変換し続ける作業を、久保は「それほど落ち着いているとは思っていないんですけど」と苦笑しながらこう説明した。 「日本での話になりますけど、小さいうちにプロへ上げてもらって、大人の選手たちとピッチの内外でコミュニケーションを取ってきたことが、いまの自分のしゃべり方やあり方に繋がっているのかなと」 FC東京U-18に所属していた2017年11月に、16歳でプロ契約を結んで3年あまり。レアル・マドリードへ電撃移籍した2019年夏から戦いの舞台をラ・リーガ1部へと移し、マジョルカ、ビジャレアルをへて3つ目の期限付き移籍先となるヘタフェですでに3試合に出場した。 全体練習なしのぶっつけ本番で途中出場した日本時間12日のエルチェ戦、得意とする中盤の右サイドで初先発を果たした同21日のウエスカ戦でヘタフェは連勝。同じポジションで続けて先発した、同26日のアスレティック・ビルバオ戦では一転して1-5の惨敗を喫した。 「どのチームにも弱みと強みがありながら、自分たちを含めて、弱みに関しては上手く見せないように戦えている。そういったところで、今シーズンは均衡が保たれているのかなと思います」 7位のグラナダから2部への降格圏となる18位のアラベスまでの12チームが、勝ち点10差のなかにひしめき合う未曾有の混戦となっている理由を久保はこう推察した。その上で13位のヘタフェを少しでも浮上させていく仕事に、プレッシャーは感じていないと言い切った。 「ファンやいろいろな方々が自分に注目してくれることを、責任というよりは要求度の高さと受け止めています。みなさんからの期待値が高い分だけ、いいプレーで応えるのが筋なのかなと思っています。目の前の試合が一番大事、という考えは常に変わりません。過去のことはすべて忘れるつもりで、しっかりと勝ち点3を拾えるように、次の試合へ全力で向かっていきたい」 31日にアラベスをホームに迎えた後は、現時点で4位のセビージャ、自身の保有権をもつ2位のレアル・マドリード、そして6位のレアル・ソシエダと強敵が続く。ヘタフェに勝ち点をもたらすプレーの積み重ねが、やがては日本代表に還元される瞬間が訪れると信じて久保は己の道を進んでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)