「強くなりたいし、本当に必要なことだから。」《井上尚弥さんインタビュー》...最強アスリートが、日々のルーティンを「楽しみ」に変える方法
「運が良い人」の秘密は「習慣」にあった ――第一線で活躍する各界の著名人たちが、実践してきた「とっておき」を明かす。 【写真】世界が驚愕…シブコの鍛え上げられた 「圧巻ボディ」奇跡のショット! 井上尚弥(プロボクサー) 取材・文/森合正範(東京新聞運動部記者)
最強のアスリートたちは勝つためになにをくり返しているのか?
ある日の取材中、井上尚弥(31歳)はトップ選手が練習するジム内を見渡して、こう言った。 「ほら、シャドー(ボクシング)をちゃんとやっていないでしょ。ああやって、のほほんとやっていたら駄目なんですよ」 ボクサーのルーティンであるシャドー。 誰もが練習の序盤で、鏡に向かってパンチの軌道や足の運びをチェックする。 ボクサーの練習はいわばルーティンで成り立っている。単調な練習の繰り返しでしか強くなれない。 その中でもシャドーは最も地味で退屈といわれる作業。 グローブを着けず、パンチの感触もない。ひたすら己と向き合う。トップボクサーでさえ、疎かになってしまう練習だ。 取材を終えると、井上は見本を示すかのようにシャドーを始めた。ルーティンを「こなす」のではない。高い集中力を保ち、全力で打ち込む。 井上は対戦相手の動きをイメージし、当たりそうなパンチを繰り返した。そこに相手がいるのでは、と錯覚するほどリアルな動きだった。
退屈なルーティンを楽しみに変える方法
なぜ、地味な練習のシャドーに日々没頭できるのか。 「強くなりたいし、本当に必要なことだから。子供のころから続けているので、大切さは身をもってわかっているんです」 日々の積み重ね。体に染みつくまで反復しなければ勝利にたどり着けない。だからルーティンを大切にし全力を傾けるのだ。 一見すれば、毎日同じことの繰り返し。しかし、井上は一度も退屈だと思ったことがない。 「ジャブひとつとっても角度がいろいろあるし、いつもと違う位置からステップインして攻撃するとか。試しながらやるのは楽しい。『ああ、こういうこともできるな』と毎日毎日発見がある。すごく奥深いんですよ」 動きの変化や思考を変えるだけで幅が広がり、新たな学びがある。日々のルーティンを楽しむ力。それもまた、井上の強さではないだろうか。 「週刊現代」2024年12月28・2025年1月4日号より ……・・ 【もっと読む】井上尚弥はやはり“怪物”だった…試合を観た元世界王者が「KO勝ち」を確信した瞬間
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