サッカーは遊び。遊びの頂点は驚きだからこそ勝ち負けだけじゃなく“何を求めて戦ったか”が一番面白い【中村憲剛×風間八宏対談 後編】
デモンストレーションと言葉と映像の3つで選手に伝え、基準を変えていく
風間 (指導者としての)憲剛の強みは、実際にプレーで見せることでできるという点。デモンストレーションできる力があると、やっぱり説得力が違ってくるから。 中村 そうですね。「パススピード!」と言うだけでは足りないんですよね。僕が実際にパスすると、選手も分かったっていう顔をする。昨年、S級ライセンスの講習の際、守備をテーマに指導したんですね。ただ攻撃のパススピードが遅くて守備の練習にならないから、笛でピッと止めて、パッとデモンストレーションしたら、みんな意識してやるようになったんです。 風間 それができるから、パス1本で守備を改善しようっていうアイデアが生まれる。デモンストレーションでパンと見せてやると、練習の空気も変わる。それも伝え方の一つだから。指導者として違いを出せるところでもあると思う。 中村 たとえば、みんなのパスの速度が時速20キロだとして、それじゃ全然遅いって実際にパスを見せて分かってもらう。最初は「そんな速いパスを要求されるのか」という顔をしていても、みんなこだわって向き合っていくと次第にそのスピードに近づいていくんですよね。いきなりは変われないけど、日常の基準が変わっていけば自然とそうなってくる。だから今、どんどんプレーや判断のスピードが上がっています。もちろん風間さんから学んだことではあるんですけど、選手たちの基準を変えられるかどうかが指導者の大切な資質の一つなんだなって身を持って感じています。 風間 デモンストレーションと言葉と映像、この3つがあれば選手には伝わります。基準を変えられたら、もう全然違ってくるから。 中村 言葉での使い方も気を配っています。その選手がどういう子なのか、どれくらい言えば分かってくれるのか。顔を見たり少し話をしたりすれば大体分かりますから。風間さんの影響なのか、僕も横文字はあまり使わないですね。 風間 単純に(日本人選手には)日本語のほうが分かりやすいからね。伝えたいものが伝わらなかったら意味がないわけだから。