日銀・黒田総裁会合後の会見4月27日(全文1)出口戦略「やはり時期尚早」
ロイター:すみません。ロイターの〓イトウ 00:15:07〓です。本日の展望レポートの成長率を見ますと、17年度をピークに19年度にかけて徐々に成長率が減速していく格好になっております。一方で物価上昇率については19年度にかけて徐々に上昇率を高めるというふうな格好になっておりまして、経済が減速している中で物価上昇率が高まるというふうに考えられる根拠。特に需給ギャップをはじめとして、どういうふうに推移していくと、そのような状況が達成できるのか。具体的にお願いいたします。 黒田:それは非常に今、この見通し自身についていろんな、もっと強気だとか、もっと弱気の見通しがありうるとは思いますけども、このロジックは非常に分かりやすいというか当然でして、わが国の潜在成長率というのは、だいたい従来、0%台の前半かというふうに思われていたわけですけれども、最近のGDP統計の改定等によりまして、われわれの見る中期的な潜在成長率というのも0%台の後半ぐらいではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても2017年、2018年と、潜在成長率をかなり上回るペースで経済が拡大していくと。で、そうした下では当然ですけども需給ギャップは改善していく。労働需給はさらにタイトになっていくということですから、そうした下で、賃金や物価が上昇していくというのは極めて自然なというか、経済のロジックに合ったものであるというふうに考えております。
期待インフレが高まらない中で金融政策の何が、物価上昇の起点になると思うのか
日本経済新聞:日経新聞の〓タカミ 00:17:01〓と申します。イオンの岡田社長が脱デフレは大いなるイリュージョンなんていう発言をされました。で、いわゆる期待インフレっていうのは弱い状況になるかと思いますが、総裁は当初、期待インフレが物価上昇の起点になるという説明をされておられましたけれども、去年の9月の総括検証で期待インフレっていうのは実態のCPIに即した適合的な形成であるという整理をされておられると思います。 お伺いしたいのは2点で、1点目はやはり今、この状況でなかなか期待インフレが高まらない中で金融政策の何が、物価上昇の起点になっているというふうにお考えかということが1点。で、もう1点目は金融政策の中でも特に量的な緩和、国債の買い入れの増加と、日銀さんのバランスシートの拡大というのが、足元で期待インフレに作用しているというふうにお考えなのかどうか。もしそうなのであれば、この量的な拡大、国債の買い入れの増加の増減というのが期待の低下や上昇につながって、実質金利の引き上げ、引き下げにつながれば、企業の行動だとか、為替にも影響が出てくるかと思いますけれども、その点をどう考えるかお願いいたします。 黒田:まず期待インフレにつきましては、これは特に私どもが世界の中央銀行、あるいは世界の経済学者たちと違ったこと言っているわけではなくて、物価上昇率というのは一方で需給ギャップに、労働市場を含めた需給ギャップに影響されるとともに、中長期的な期待インフレ率にも影響されるということであります。 その場合の期待インフレ率がどのように形成されるかっていうのは、これはそれぞれの国とか局面でいろいろな分析がなされておりますけれども、昨年の9月の総括的検証で示したように、わが国の場合は先ほど申し上げた適合的期待形成の要素が非常に強いと。つまり足元の物価上昇率が上がると期待インフレ率も上がっていくと。下がると期待インフレ率も上がっていく傾向があると。 これは非常に対照的に米国の場合は2%程度の物価安定目標に、期待インフレ率が非常に強くアンカーされているというところとの違いははっきりしているわけであります。そうした下で期待インフレ率を含めて実際の物価上昇率もどのように展開していくかっていうことについては先ほど来、申し上げているとおり、潜在成長率を上回る経済の拡大が当面続いていくという中で、需給ギャップはさらに改善し、賃金の上昇を伴いつつ、物価が上昇しているというプロセスが起こってくると。他方でもちろん一昨年の夏以来、エネルギー価格が非常に大きく下落し、それが実際の物価上昇率を下落させて、期待インフレ率も適合的に下落させたといったような状況は今、なくなってきていまして、むしろエネルギー価格が戻ってきたことによって、実際の物価上昇率には引き上げの方向で効いてくる可能性が高いわけでして、いずれにいたしましても需給ギャップの縮小は続くと、思われる。需給ギャップの改善が続くという中で、エネルギー価格の回復ということもありまして、実際の物価上昇率が上がっていくと。その中でやはり期待インフレ率が、予想物価上昇率も徐々に上昇していくというふうにみられるわけであります。 それから予想物価上昇率とか、そのほかのいろんな市場の動向につきまして、バランスシートの拡大が直接的に期待に、期待物価上昇率であれ、期待、将来の金利であれ、為替レートであれ、そういうものに直接的に影響するかどうかについてはこれはまだ、経済学者の間でも、いろいろな議論があるところでありまして、私どもの量的・質的金融緩和、始まったとき以来、強調しておりますとおり、国債の大量の買い入れによって、量的・質的金融緩和を行い、それによって一方で期待物価上昇率とか、予想物価上昇率にもプラスの影響があるだろうし、何よりも、長期金利を含めて名目金利を大幅に引き下げて、その結果として実質金利を引き下げ、これが実体経済にプラスの影響を与えるということが、金融緩和の実体経済に影響をする主要なチャネルであります。 もちろん期待に対する影響というのもあったとは思いますけれども、基本的な金融緩和の、量的・質的金融緩和の実体経済に対する影響のチャネルっていうのは先ほど申し上げたようなものでありますので、そこは現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下では金融調節の目標を直接的に短期の政策金利と長期の国債の金利の操作目標を定めて、いわばより明確な形で金融緩和を進めておりますので、そういった意味では操作目標は変わっていますけれども、金融緩和の目標なり、金融緩和の実体経済に与える影響のチャネルという点についてはまったく変わっていないというふうに思っています。 【連載】日銀・黒田総裁会合後の会見4月27日 全文2へ続く