東工大・東京理科大・芝浦工大…大学工学系「女子枠」に大注目、定着への道筋は?
東工大は22年秋に「24、25年度に計143人の女子枠を導入し、学士課程の女子比率を約13%から20%以上に引き上げる」と発表した。関東圏の進学校出身の男子が大半を占める理工系トップ大学とあって、会員制交流サイト(SNS)などで激しい反対の声が挙がった。しかし今春の志願者倍率は平均4・6倍と、当該の女子に強く支持される結果となった。 それだけに受け入れ側の理解促進は同大にとって大仕事だ。学生はリベラルアーツ(教養教育)の授業で、女性差別の歴史的背景など学んだ上で議論を実施。その授業を通じて「男性が支配的立場にあると意識していなかった」「男性が高いげたを履かせてもらっていた、という表現に納得がいった」などの声があったという。 益学長は女性教員向けに3回、53歳以上の男性教員向けに2回、説明の場を持った。誤解は入試業務の経験がない若い女性教員の間でもあったという。益学長は「女子枠の実施はエネルギーがいる。少人数の設定では割に合わない」と、他大学には思い切った実施を勧めている。 女子学生の実数と比率で目を引くのは東京理科大だ。理工系女子の在学数は4000人超。女子入学者(夜間学部を除く)比率は23年度に25・2%だったのが、女子限定選抜を始めた24年度には29%とほぼ3割に高まった。 理工系人材の入学定員で同大は日本大学に次ぐ2位。薬学や建築、生物系などの女子比率は5割近い。比率の低い学科での女子限定選抜は、48人の募集に志願が39人、合格は25人だった。工学部機械工学科の女子比率は約21%と倍増し、初年度として効果はまずまずだとみている。 選抜はまず、高校の成績の提出で始まるが数IIIの履修は必須。さらに小論文や志望理由の面接に加え、学科別に重視する数学や物理の口頭試問などがある。「一般選抜の枠で試験の合格点を下げるのではない」(石川学長)ため、同大は「女子枠」でなく「女子限定選抜」という言葉を使っている。 「最近は上級生の女子が新入生歓迎の女子会を開いたり、女子向けのオープンキャンパスの企画をしたり。女子学生増によって様子がぐっと変わってきた」というのは、芝浦工大の磐田朋子副学長だ。 同大の女子枠は18年度入試からと早かった。女子高向けの1週間の研究室体験、女子生徒の保護者向け大学説明会など、多様な策で女子学生比率を20%ほどまで上げてきた。 3大学が口をそろえるのは「年内入試でも一般選抜でも、入学後の成績に差は見られない」ことだ。偏差値主義が批判されてきた日本の大学入試の転機に女子枠はぴたりとはまっている。