投打ともに粘り強く…“守り勝つ野球”でなぜ広島は首位を堅守できているのか
交流戦を10勝8敗の5位で乗り切り、2位・阪神に2.5ゲーム差をつける首位に立つ広島。下馬評は高くなかったが、なぜセ・リーグの主役を演じることができているのか。発売中の『週刊ベースボール』では広島の強さを解き明かす特集を掲載しているが、ここではカープの攻撃力、投手力の現状評価をした記事を特別公開する。【週刊ベースボール7月1日号より】 【選手データ】矢野雅哉 プロフィール・通算成績・試合速報
失敗してもなんの! 攻めて1点を奪う
【攻撃力】 リーグ1位タイの36盗塁以上に、他球団より群を抜く失敗32回という数字に実は強さが隠されている。「少しでも隙があったら突いていく走塁がカープの野球」と新井貴浩監督。決して失敗を恐れることのない超攻撃的な機動力野球で、交流戦でも何度も勝利をつかみ取ってきた。 6月14日の楽天戦(楽天モバイル)では0対0の延長11回、先頭が出塁して代走・羽月隆太郎にバトンタッチ。犠打で二塁に進んだ羽月は、果敢に攻めて三盗を決めた。最後は矢野雅哉の犠飛で待望の1点を奪取して勝利。また、同9日のロッテ戦(マツダ広島)では、5回にエンドランで一死一、三塁のチャンスをつくり、菊池涼介のスクイズで先制点を奪った。 今季すでに0対0の引き分けを含めた無得点試合は14を数える。空気を一変させる本塁打は、今後も多くは求められないだろう。だが、足と小技を絡めた緻密な攻撃を持ち味に首位を快走する。光るのが矢野の台頭。類いまれな守備力と粘り強い打撃で遊撃レギュラーを勝ち取り、三盗3つを含む9盗塁はリーグ2位の成績だ。 今季、いまだ一度も2カード連続の負け越しがない。攻撃に派手さはないものの、これからも粘り強く、相手を制していく。
“新井流”がハマり抜群の安定感
【投手力】 チーム防御率2.18という成績を見れば、首位を快走する要因は一目瞭然だ。防御率0.966の大瀬良大地を筆頭に2点以下が3人。交流戦に限れば、12球団でダントツのチーム防御率1.85。特に先発陣が1.49と抜群の安定感で、2017年以来7年ぶりとなる“鬼門”の勝ち越しを支えた。 新井監督は主力投手陣に調整を一任して迎えたシーズンだった。「去年までフリー打撃登板からシート登板をやって、と決まっていたが、必要ないならやらなくていい。全部任せた」。より強い自覚と責任感を芽生えさせた“新井流”のマネジメント。2年目の一番の改革が、好成績に表れている。 リリーフ陣は特に栗林良吏、島内颯太郎が、ともに70登板ペースとフル稼働状態だが、頼もしい存在として加わったのが、故障で出遅れていた新外国人のテイラー・ハーンだ。二軍では10戦無失点で、一軍合流後も6戦無失点と無双を続け、厚みを増すことは確実。投手陣は、今後さらに盤石となる。 写真=BBM
週刊ベースボール