「実は年明けが最も多忙」「私服が派手」…知られざる「葬儀屋」の裏側 「家族を“遺族”と呼んでしまうことも」
この世に生まれてくれば、誰にも必ずやってくるのが「死」。厚生労働省の「人口動態統計」によると、昨年の日本における死者総数は157万6016人だったという。 【写真】簡素・簡略化…時代と共に変遷する葬儀を支える裏方たち そして亡くなった人と、家族や友人たちとの最後の別れの場を提供するのが「葬儀屋」だ。 明日を生きるために、まず今日を懸命に生きている我々にとって、日常で「死」を意識する機会はそう多くないだろう。そのせいか、仕事内容の詳細があまり知られていない部分もある。今回はそんな葬儀業界にスポットを当ててみたい。
半数が「家族葬」を選ぶ時代
昨今の核家族化・独身者の増加により、葬儀のカタチは近年大きく変化している。 通夜と本葬を2日に分けて行う「一般葬」が減少し、家族や親族のみで執り行う「家族葬」や、通夜をせず告別式のみ行う「1日葬」、宗教儀式のない火葬のみを行う「直葬」などが増加している。 なかでも増加傾向にあるのが家族葬で、終活関連サービス会社「鎌倉新書」によると、2015年は31.3%だった家族葬の割合は、今年50.0%にまで増えたという。 こうした式の執行を請け負うのが葬儀屋だが、各現場においても様々な変化を感じることがあるという。 「高齢化によって式に参列できる絶対数が減っていますね。また、葬儀には商売をしていた故人の後継ぎ披露目のような役割もありましたが、自営業者が減ったせいか、その意味合いが薄れてきている気がします」 「喪主の方の高齢化、人間関係の希薄化ですね。あとは、葬式に対するマナー感覚も変わった気がします。『マナーが悪くなった』という意味ではなく、しきたりや風習に捉われない人が増えました」
霊柩車の装飾が消えた理由
葬儀屋に足を運ばずとも、我々が業界の変化を身近に感じられるものがある。街を走る「霊柩車」だ。 20年ほど前までは「宮型」と呼ばれる、豪華な装飾が施された霊柩車が街中を走る姿をよく目にしたが、今はもうほとんど見られなくなっている。 「木材を使用しているので管理が大変であること、デザインが仰々しく値段も高いのでお客様が敬遠すること、そして住宅地に葬儀会館がある場合、宮型は使わない協定を近隣住民と結ばされる場合もあります」 「不況が続き、金銭的にも世相的にも合わなくなったんでしょう。あの宮型を作る職人が減ったのも1つの理由だと思います」 ちなみに、「霊柩車を見たら親指を隠さないと親の死に目に会えなくなる」という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。もちろんこの言説に科学的根拠はない。 にもかかわらず、そう言われるようになったのには諸説あるが、「人間の親指には魂の出入り口がある」、「親指を握ると疫病にならない」などといった昔からの言い伝えが信じられてきた。これがいつしか、「親指=親」と解釈を変えて流れ伝わるようになり、結果「親の死に目に会えなくなる」などとされるようになったようだ。