山崎まどかと長谷川町蔵が語る、映画界を牽引するグレタとノアのパワーカップル論。
グレタ・ガーウィグとノア・バームバック。いまやこのふたりは、ハリウッドを代表するパワーカップルとなった。最近は、バービーの共同脚本でも話題を呼んだ。 グレタ・ガーウィグの魅力を紐解く記事第3弾は、アメリカのポップカルチャーと青春映画を題材にした『ヤング・アダルトU.S.A. 』や数多くの映画評論などを執筆する山崎まどかと、映画や音楽の専門家・長谷川町蔵にグレタとノアのケミストリーを聞いた。 山崎まどか(以降山崎)『バービー』がメガヒットして、監督・脚本のグレタ・ガーウィグと共同脚本のノア・バームバックはこれで名実ともにハリウッドきってのパワーカップルになったわけだけど......。 長谷川町蔵(以降長谷川)ふたりの最初のコラボレーション作だった14年前の『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』(2010年)を観た時は予想だにしなかったことだね。 山崎 当時のグレタ・ガーウィグは、インディ映画の"マンブルコア"と呼ばれるムーブメントにおけるジーナ・デイヴィスみたいな存在として注目されていた。 長谷川 マンブルコアはお金がない若者の日常を、超低予算で撮ったマンブル(つぶやき)のような映画で、お金がないから監督同士がそれぞれの作品に俳優として出演していた。いまは俳優メインのジェイとマークのデュプラス兄弟もマンブルコア出身なんだよね。 山崎 グレタも最初は脚本家志望だったんだけど、マンブルコアに関わるようになって、女優としての才能が開花した。 長谷川 『ベン・スティラー人生は~』はノアが下の世代のマンブルコアに共鳴して撮った作品で、グレタを女優として起用したことで、彼の作風もリフレッシュされた。監督と主演女優として始まったふたりの関係をクリエイターとミューズとして語る人も多いけど、最初から作り手としてのグレタのフィードバックは大きかったと思う。監督としてのノアのキャリアはグレタ前と後に分かれていると言えるからね。